秘密の花園
レイ×ユウ

ぼくはお花畑で一人、花の冠を作っていた。
その時ユウちゃんが何をしていたのかは知らない。多分どこかへ行ってしまっていたのだろう。咲いた花達はなんとも美しい色合いと芳しい香りを放っていた。ぼくは、吸い寄せられるように花畑に入って、帰ってユウちゃんにかぶせた姿を想像しながらそれを作っていた。

…帰らなきゃ。

随分時間が経ってしまった、気がする。ぼくは元のプリンプタウンホールに戻るために、元きた道を戻っていった。――しかし、いくら進んでも花畑を抜けることが出来ない。僕はどんどん不安になっていった。もしかしたら、自分は入ってはいけない場所に入ってしまったのではないか…どんなに進んでも出口は現れてくれなかった。ぼくは疲れて、進むのをやめた。

…ユウちゃんに、プレゼント…したかったのに。

「…くん!…イくん!れ〜いくん!」
「……?」
にわかに聞こえてきた声に、ぼくは驚いてしまった。
その声はユウちゃんのものだった。ぼくは、夢を見ていたようだ。
「レイくん、どうしたの?すごーく苦しそうな顔だったよ?」
「……」
心配そうなユウちゃんの顔を見て、ぼくの心はわずかに揺らぐ。
「…だいじょうぶ」
「ダイジョーブなの?ユウちゃんとぉおおおおっても心配したんだからねー!」
ぼくの言葉を聞いて安心してくれたようで、ユウちゃんはいつもの笑顔に戻ってくれた。
「んじゃ、レイくん、いっしょにお散歩行こ!ね!」
いつもの元気なユウちゃん。ぼくも、いつものぼくに戻った。
「れっつごー!」
言うが早いかユウちゃんは先に行ってしまう。追いかけようと思ってふと、ぼくの無い足が止まった。
「…あれ」
じっと左手を見る。
夢のなかで作ったはずの花の冠が、そこにはあった。

「もーレイくん!遅いよー!」
ユウちゃんがふくれっ面で、暫く先で待っていた。
「…ごめん」
「あはは、いいのいいの!レイくんが寝てる間にぃー…」
ユウちゃんが話してくれる話はみんなぼくのたからもの。だからぼくも、お返しがしたかった。
「ユウちゃん…後ろ向いて」
「ん?どうしたの、きゅーに…」
ぼくが秘密の花園から持ち帰った花の冠を彼女にかぶせる。
「ん?なぁに、これ」
「…ユウちゃんがもっと可愛くなる…おまじない」
こんな言葉はぼくには甘すぎて、顔が紅くなる。
「……」
ユウちゃんはしばらくポカーンとしたまま、いつものぼくみたいになにもしゃべらない。
「…えへへ、ありがと」
頬を桜色に染めたユウちゃんは、とても幸せそうな顔をしてくれた。
この笑顔は、ぼくだけのものだから、誰にも渡さない。そんな意志も込めて、ユウちゃんを抱きしめる。ずっとこんな時間が続いてくれたら、ぼくは死んだことを後悔しない。

ユウちゃん、

ありがとう。
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ユウレイは寝なくても大丈夫ですが、レイくんはよく夢を見る気がします。
彼には記憶があるから、それを暗示するような夢。そんなことはつゆ知らず、ユウちゃんは元気に死後を楽しんでられるのは記憶が無いからなんでしょうね…。
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