30 | ナノ





制服の裾を引っ張られてムッとしながら振り返る。喧嘩したばかりなのによく口が聞けるよね。わたしは無理ですごめんなさい。トコトコと無視して歩いていると下駄箱まで来て呆然と立ち尽くす。


「雨降ってるって言おうとしたのにお前が先々行くからだろ」

「今日、降水確率低かったのに」


ざあざあと勢い良く降り続く雨。なかなか止む気配が見えない。


「送ってく」

「いいって」

「お前傘持ってねえだろ」

「濡れて帰るからいい」

「風邪引いて俺のせいにすんなよ」

「車に引かれて死んでやる」

「そっちのほうが困るじゃねえか」


ほら、行くぞ。そう言って差しのばしてくる手がいつもより遠い。誰にでもそうするからあの子もあんなに嬉しそうだったんだよ。



20140107

   

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