30 | ナノ





赤、青、黄、白、黒。目の前に広がる色の数。混ぜて水を足してぐるぐるぐる。


「倉持くんは緑」

「緑?」

「でもオレンジもいいよね」

「全然違うじゃねーか」

「意味があるの、意味が」


彼女はそう言って白いキャンパスに次々と色を付けていく。俺には絵の才能は皆無だから少し羨ましいが、彼女は運動が出来る俺が羨ましいと言う。人間はないものねだりな生き物だ。


「オレンジもいいって言ったのはね、」


オレンジの色をキャンパスに塗りながら彼女は口を開く。


「倉持くんはわたしの太陽だから、明るく照らし続けてくれるからオレンジもいいなあ、って」


目線は合わせてくれないが照れているようだ。俺だって恥ずかしい。


「俺のオレンジはお前だばーか」



20131227

   

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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