祐希くんと過ごして二週間が経った頃のある夜に小太郎がやって来た。扉が開く音で目が覚めていつものようにそっと祐希くんを起こさないように布団から抜け出す。
「どうしたの、そんな難しい顔して」
お茶を入れて彼の前に差し出す。ずずっと啜りながら「はあ」と美味しそうに飲む姿を見て少しだけ安心をした。ご飯はもう食べたのかと聞くとまだだと言うので残り物のハンバーグとご飯とお味噌汁とサラダを差し出す。
とても美味しそうに食べるので嬉しいなあと思いながらわたしは手土産として買ってきてくれたプリンを食べるのであった。
「そうだ」
「どうしたの?」
「もうすぐあの子のお父さんが見つかるかもしれなくてな」
「どういうこと?」
「なんだ、聞いてなかったのか」
ご飯を食べながらぽつりぽつりと話し出す小太郎。要約すると彼はあの雨の日の前日に祐希くんと出会ったのだそうだ。一人で公園に居てどうしたのかと尋ねたところ、母が死んで身寄りのなかった彼は公園で過ごしていたのだという。その日は小太郎が連れ帰ってご飯を食べさせたのだけど、その時小太郎が仮宿としていたところはお風呂が付いていなかったらしい。また自分と一緒にいるといつ命を狙われてもおかしくないと思いわたしに預けたのだという。
「そのお母さんは少し前に離縁していて、その子のお父さんを探すのに手間取ってしまってな」
「そっか」
「それももう少しで見つかりそうなのだが。ところで花音、あの子とはうまくやってるか」
「うん。すごく楽しいよ」
小太郎はそれ以上なにも言わなかったけど、心の中で祐希くんがいなくなったらわたしが寂しい思いをするのを感じていたのだと思う。珍しく小太郎が「今夜は俺もここで寝よう」と言うのでもう一つ布団を引いて祐希くんを真ん中に移動させ三人で並んで寝ることにした。
わたしもいつか家族が出来たらこんな風になるのかなあなんて思うと思わず笑みがこぼれる。幸せだなあと思いながら小さな、だけれど温かい体温を感じながら瞼を閉じた。