past | ナノ
学年が一つあがるだけで特に変わることなんてあまりないなあとおもう。四月、留年のお電話が家にかかってくるわけでもなく始業式のために登校したのはもう一ヶ月も前の話だ。高校二年生も三年生も中身はそのままなのだから、学年始めは慣れなくてたまにプリントとかに前の学年の出席番号を書いてしまう。今年ももう数度やらかした。学年が変わったからと言って原田くんは相変わらず違うクラスだ。一年のときに仲良しだったミーコは去年は同じクラスじゃなかったけど今年は同じになれた、それぐらいしか変化がなかった。あとお昼ごはんを食べるメンバーも変わった。他のクラスになったからと言って去年仲良くしていた子たちとは隣のクラスに行ったりしたときや、廊下ですれ違ったときに話したりするしなんやかんや結局変わらないのだとおもう。
「ねえ先輩どうすんの!」
「え?」
今日もいつもと変わらないお昼ごはんを食べているときだった。ダダダッと廊下のほうで騒がしい音がしたと思ったらガシャンとドアが開けられて(ガラガラなんて可愛らしい音ではなかった)、二年生の成宮くんがわたしの目の前に座る。成宮くんとはたまにすれ違ったときに挨拶する程度の仲で、だけどもどうやら原田くんによると懐かれているらしい。彼のお姉さんにない優しいお姉さんな雰囲気が出てるとかどうとか。優しくはないと思うけど。
そして先程の会話にいたる。
「なにって、ほら!雅さんの誕生日プレゼント!」
「あ、はい」
気迫に押されてつい返事してしまった。原田くんの誕生日は確かに覚えている。5月11日。ゴールデンウィーク後なんだねと初めて聞いたときそう言うとあんま5月に見えねえだろ、と言われた。その通りだと思ったのは口に出さなかったけど。
わたしだってプレゼントを考えていなかったわけではない。ただ彼は分かりやすいほうではないから欲しいものが何かわからない。でも何が欲しいのかとか直接聞いて変に勘ぐられるのも嫌だし、なにより欲しいものを欲しいといって貰うだけなら面白くないだろなあと少なくともわたしは思って、そしてまだ結論が出ていないだけなのである。
「あのねえ、そんな悠長にしてていいの?ただでさえどんくさくてのんびり屋さんで優柔不断なのにさ」
「なんで知ってんの!」
「雅さんがよく言ってる・・・ってウソウソ!見てたらわかるんだってば、俺人を見る目あるから!」
すごく怪しいけど今回は成宮くんを信じることにする。他の友達はどんなものをあげているのか聞いてみると、ネックレスとかのアクセサリーらしい。でも運動部の彼がずっと身につけているわけないだろう。ミサンガは部活とかでマネージャーさんとかから貰っていそうだし。悩み始めると長くなるのはいつものこと。
「鳴、なにしてんだ」
「あ!雅さん!」
「ここ一階だろ」
「なまえ先輩とお話し。雅さんには内緒だよ。ね、先輩!」
成宮くんがそう言うと原田くんはちらりとわたしのほうをそうなのか?とでも言いたげな目で見てきたからこくりと頷く。それから二人が話す姿を見て二人とも楽しそうだなあなんて母親みたいなことを思う。昼休みは俺のクラスに来いって言っただろ。いや、言ってた時間より早くご飯食べ終えちゃったからなまえ先輩のところに行きたくてさ〜雅さんのドケチ!それぐらい許してよ!うるせェ行くぞ。そう言って成宮くんの右手を掴んで歩き出す姿に手を振ると空いてるほうの手をあげてくれた。こう、成宮くんと話しててもわたしのことを忘れずに気遣ってくれるそんなところに胸がまた少し高鳴った。
HappyBirthday
20140516