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光が眩しくて開かない瞳に手をかざし薄く瞼を開ける。なんだか見慣れない人影があってぼーっとそのまま見つめていると「起きたか」と男性にしてはそこまで低くもない声。起きないとなあ、今日は何月何日だっけ。そんなことを悠長に考えながら布団の中をもぞもぞとする。朝が苦手なわたしにとって布団から出るのはすごく勇気のいることだ。(この季節は特に寒いし)

「ん」
「起きねえのかよ」
「んー?あれ、しんいちろー?」
「寝ぼけてんだろ」

なにかの見間違いかと思い、目を擦って今度は寝ぼけてなんかいない、しっかりとした視線を向けるとやはりそれは伸一郎で。なんでこんなとこにいるのとか、たくさん聞きたいことはあるけどただ彼がいてくれるだけで嬉しさが込み上げる。

「おかえり」
「おう」

布団から上半身だけを起こして両手を広げると少し照れ臭そうにポリポリと頭を掻いた伸一郎が近寄ってきて抱きしめられる。外の匂いだって言うとそりゃ帰ってきたばっかだからなって答える。顔をあげて伸一郎のほうを見るとやっぱり本物の伸一郎だ。伸一郎の匂いとか、細そうに見えてがっちりした背中とか。そういうの全部含めて

「やっぱりすきだなあ」
「は?」
「久しぶりだから、うん。でもやっぱりすき」
「あっそ」

冷たくそう言うくせに胸の高鳴りが早くなって行く伸一郎が素直じゃないことなんて今更の話だ。もうちょっとこうしていたいな、彼が帰ってしまうまえに。そう思いながら少し力を入れて抱きしめると「どこにも行かねえよ」なんて言うから、わたしの考えを全部見透かされているようで。ほら、また好きになる。





枡企画
20131205
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