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御幸となまえと俺。高2のときには気づけばその三人でいた気がする。たしか当時はまだお互い苗字で呼び合っていて、月日が経つとなまえは一也、洋一と呼ぶようになった。御幸と俺は相変わらず今でも苗字呼びだけど。
高校のときは友達がいない御幸と違ってなまえは女子とも普通に話してたし嫌われたりとかそういうのもなくて、要領がいいやつというイメージを持っていた。卒業してからも御幸はプロ、なまえは教育系、俺は経済系とバラバラの進路を歩んだが三人で1、2ヶ月に一度程度で会うことは当たり前だった。

「よーいち、おつまみ」
「もう食ったのかよ」
「なんか腹立ってきて」

テレビの中では今日、決勝打を決めた御幸がヒーローインタビューをされていた。腹が立つ気持ちはわかるが俺の家のつまみを食い漁るのは勘弁してほしい。
いつからだっけか、俺となまえが二人で会うことのほうが断然多くなった。たしか御幸に彼女が出来たと報告を受けたときからだったと思う。みんなそれぞれ恋人が出来たことはあったし、チヤホヤしたり貶したりしたこともあった。でも今回は何故だか違って、それまでもそうだったかのように三人での集まりはパタリと無くなった。もともと三人で集まることしかしていなかったからか、こいつと二人で何処かへ行ったりだとかお互いの家に行ったりだとかはあの報告後がすべて初めてだった。お互い御幸のために誕生日プレゼントを買いに二人でどこかへ行くようなやつじゃなかったからなのかもしれないが。

「おまえ今日飲み過ぎ」
「酔ってないよ」
「嘘つけ、今日は泊まれ」
「倉持くんやらしー」
「わかったから布団行け」

酒が弱くて缶チューハイ二本で酔っ払う癖に、こういう無茶な飲み方を何でするんだろうと考えたこともあるが、俺が出会ってからというもののこいつは常に頭のネジが三本くらいぶっ飛んでるやつだったので、これ以上何も言えなかった。来客用の布団を敷いてそこに寝るように指示する。布団に入って首までこっぽり布団を被ったなまえが見つめてくるからどうした?と聞くとふるふると頭を横に振った。

「くらもち、」
「おまえ酔っ払ってるとき苗字で呼びすぎ」
「そうかなあ」

御幸のことは酔っ払ってても一也のくせに、なんていう一言が喉で詰まる。なにを言おうとした、俺は。
考えたらおかしくなりそうで、頭に思い浮かんだことを直視したくなくてとりあえず布団のそばにしゃがんで頭を撫でた。なまえは猫みたいに気持ち良さそうな顔をしたけど俺の心は晴れなかった。

「あのね、わたし少しずるいかも」
「あ?」
「洋一のこと、すき」

そう言ってにこり、と笑うなまえ。信じられなくてずっとなまえの顔を見ているとだんだん赤くなっていき、ついには布団を頭までこっぷりと被ってしまった。布団の上からなまえを抱きしめると弱い抵抗をされる。

「な、顔見せろって」
「やだ。絶対笑うでしょ」
「笑わねえから」

そういってひょこりと顔を出したなまえのピンクの唇に一つ、口付けを落とす。付き合うか、そう言うとなまえはケタケタと笑いながら洋一と付き合えるのはわたしだけだよ、と言った。今度御幸と三人で会ったときは、そのときにはこいつを彼女として紹介してやろうと思う。御幸の驚いた顔を思い浮かべると必然と口角が上がった。





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20131209
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