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遠距離恋愛って結構酷だと思うときがある。
わたしだって高校生だし、友達が彼氏と一緒に帰ったり遊んだりするのが羨ましい。でもその分遠距離恋愛で良かったと思うこともたくさんある。わたしがヘマをしたときに彼氏に知られないで良かったとか、友達が彼氏と喧嘩しているのを見たときとか。
だからって会いたくない訳ではないし、好きでいてくれるのか不安になる時もある。大抵そのときは電話をして声を聞いただけですごく安心する。それだけで十分な気持ちもする。
「ねえねえ暁くん」
「なに、」
「なんでもない」
ふふって笑うと電話の向こうの暁はなんなの、と不機嫌そうに言った。好きだって言っても言い足りなくて、でも言ったら安っぽく聞こえそうで、たくさん言いたいのに恥ずかしくて言えなくて。でも電話をしているときはすごく幸せ。
「あ、ねえ」
「なあに?」
「なまえ、すき」
「へ、」
暁から好きと言われるのは何時以来なんだろう。普段は絶対言ってくれないし、別に言って欲しいとも言わないから珍しくて腑抜けた声が出てしまった。
「あ、明日試合だから寝る」
「暁、先発なの?」
「うん」
「がんばってね、応援してる」
「なまえ、おやすみ」
「おやすみ」
通話時間、36分。名前呼んでくれたり、すきって言ってくれたり。今日の通話は幸せだなあなんて思って、電気を消して布団に潜った。今日は一段といい夢が見れそうで、どことなく嬉しくて眠たくなくて。やっぱりすきだなあ、なんて思って。そうして少しだけ、暁に会いたいと思う午前0時。
20130503