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ティラミスのようにほろ苦くちょっぴり甘い、なんて恋じゃなかった。甘くなんて全然なかった。わかっていた上で恋をしていたけどなんでだろう苦過ぎたのかな、頬には涙が何粒も止めどなく流れている。思い浮かぶのは、それでもあの人の顔だった。もう、わたしの脳内を占拠しないでよ。

「ねえ」

声を掛けられて振り返ると同じクラスの成宮がいた。綺麗な髪の色が夕陽の色に透けていて綺麗だと思ったけれど、私が今一番見られたくなかったのは成宮だった。入り口のドアを閉めて二人だけの空間になる。空気は変わらず重くて、私の鼻をすする音だけが響く。部活は、とかいつもならぽんぽんと出てくる軽口も叩けないほど泣いていまっていた。

「泣いてるの?」
「らしくないとか思ってんでしょ」

いつもお互いふざけあって冗談を言うような仲だからどうせまた笑われるなんて思っていたけど、成宮は何も言わなかった。何も言わずに、私の背中をただゆっくりと抱きしめた。うっすら汗ばんだ肌が私の顔の横にあるのを感じた。部活どうしたんだろう、すごく気になるけど今はいいや。涙は止まらないのに私の中の私はとても冷静だった。

「成宮」
「なに?」
「本音、言っていい?」
「言いなよ、全部聞いてあげるからさ」
「昔からずっと好きでも、私は選ばれなかったんだなあ」

成宮はそれ以上何も言わなかった。ただただ泣いてる私を抱きしめているだけだった。

「今は忘れられないかも知れないけど、なまえならいい恋ができると思うよ」
「できるかな」
「それだけは保証する」

そう笑顔で自信満々に言いあげるものだから、なんだか悔しい気持ちになって、だけどどこか体は軽くなった。成宮のことを好きになればこんな気持ちもなかったのかな。





20130107
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