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131123 ドラコ(前)



外は雨が降っていてまだお昼間なのにどんよりとしている空はわたしを夜に錯覚させる。はあ、と溜息をつきテーブルの上に肘を置き顎を乗せる。こんな天気の日は憂鬱な気分になるのだ。


「なあ、」

「……」

「なあ、おい」

「……」

「聞いてるのか」


ドラコはいつも呼びかけてわたしが応答してから要件を話し始める癖がある。それがたまにすごく面倒臭い。わたしも一言聞いてるよって言えばいいのだけどこんな雨の日はすべて行動にやる気が出なくなる。返事をしないでボーッとしていたらドラコは拗ねたのか寝室へ行った。

いつもそう、拗ねたらドラコはとことん面倒臭くなるのである。だからこれ以上面倒臭くならないように仕方なく立ち上がった。


「ドラコー?」


ベッドに入り頭まですっぽり布団にくるまっているドラコはまるで子供のようだ。ベッドの側に座り、ドラコの頭があるほうへと顔を近づける。


「ドーラコさん」

「お前が無視するからだ」

「ん、ごめんなさい」


そう言うとドラコは布団からひょっこりと顔を出してしかめっ面をしてみせた。眉間のシワを人差し指で伸ばしてやる。えへへと笑うとドラコもフンといつもの笑顔を見せてくれた。


「そうだ」

「どうしたの」

「出かけるぞ」

「え、雨降ってるのに」

「いいから」


わたしが着替える間ドラコにはリビングで待っていてもらって結局家を出たのはお昼の三時ごろだった。いくら外が雨だからって相合傘なんて、しない。そういうやつなのだ彼は。


「ねえ、どこ行くのー」

「そんなの決まってるだろ」

「言ってくれなきゃわかんないよ」

「婚姻届を貰いに」


いまなんて言った?婚姻届?だれとだれが結婚するの。なんだおまえは結婚したくないのか。いやそういうわけじゃないけどさ。頭の整理が出来ていないわたしと、いつも通りのドラコ。確かに数日前にプロポーズはされたし既にドラコのご両親にも会ってはいるけれど。


「ねえほんとにいくの」

「嫌なのか」

「恥ずかしい」

「結婚しなくていいんだな、おまえみたいなやつ他の誰も貰う人なんていないだろうに」

「いや、ドラコのほうが貰ってくれる人なんていないよ」

「うるさい」


そうこうしてる間に役所についた。深呼吸を一つ。ドラコを一度見る。真っ直ぐな顔をしていた。そしてわたしたちは一歩踏み出した。


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