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131104 財前直行

まとまらなかった悲しい

先週、彼が怪我をして入院したと聞いてからずっとずっと心配でやっと今日お見舞いに来た。財前は病室で眠っていてこのまま目覚めなかったらどうしようとか思ったけど、肩を揺らすと驚いた顔をして怒られた。


「あーめんどくせぇ」

「うるさい」

「だからおまえは来て欲しくなかったのに言ったやつだれだよ」

「えー?田中くん」

「田中退院したら絞める」

「はいはい、あ、これどーぞ」


お土産に持ってきた彼の大好きなみかんたっぷりのフルーツどっさりゼリーを二人で食べる。あーんしてあげよっか?なんて冗談で言ったらおでこにデコピンをされた。これがまた地味に痛い。



「屋上行くか」


そう言われて彼の車椅子を押しながら屋上へ向かう。途中で看護師さんに「彼女〜?」なんてにやにやしながら聞かれて「そんなんじゃねーっす!」と赤くなりながら答えていた。ちょっぴり可愛い。

屋上に行くと雲がなく一面に青空が広がっていた。二人でベンチに座ってぐだーっとする。病院の中は涼しくて汗はかかないけど、屋上に出ると途端に汗がでてくる。


「なあ、」

「なーに」

「俺、おまえを甲子園に連れてってやれなくなった」

「は、」

「来年の夏に間に合わねえんだってよ」


財前のほうをちらりと見ると空を見上げていた。どんな表情をしているのかは眩しくてわからない。野球をしてる財前が見れないということよりも、彼が大好きな野球をプレーすることが出来ないのに悲しさとか悔しさを我慢していることがなにより辛かった。


「なに泣いてんだよばーか」


そういって優しく財前はわたしの頭を撫でて抱き寄せた。手術したほうの足はサポーターでがっちり固定されている。病室でどんな感じなの?と聞いたら今度抜糸するんだわと言ってた。

ねえ財前、あんたが泣けないならあたしが泣いてあげる。


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