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130721 平子真子

涙を入れる為の小箱

「なあ、お前どうするねん」


昨日も一昨日もその言葉を真子は言った。藍染たちとの戦いからはもうとっくに三ヶ月は経っていて、わたしたちは平和な日々を過ごしていた。真子は五番隊隊長、ローズは三番隊隊長、拳西は九番隊隊長に復帰するらしい。

110年前、わたしは一番隊のただの平隊員だった(でも何故かわたしも魂魄消失案件の始末特務部隊に招集されたのだった、それも山じい指名の)。まあその頃から真子とは付き合っていたし、みんなとも仲が良かったからなのか、現世での生活は楽しかったし、今の生活が無くなるんだと思うと何処と無く寂しい。尸魂界に戻っても別に隊長なんてなるような実力は持っていないし、たぶん平隊員なんだろうなあなんて思うとクスリと笑えてくる。


「なに笑っとんねん」

「なんでもないですよーだ」


そう言うと真子はわたしが座っていたソファの隣にドサっと腰掛けた。くるくるとわたしの髪の毛を弄ぶ。その行動はあまり好きじゃないけれど、今のわたしにはどうでもよかった。


「ね、真子」

「なんや?」

「わたしが尸魂界に行かなかったら寂しい?」

「そりゃーな。そんなん今までずっと一緒におった彼女に会えへん日が続いたら寂しいに決まっとるやろ」


でもな、と真子は続ける。


「俺の気持ちなんてどうでもええねん。俺とおまえが別に離れていようが無かろうが、そんなん今まで通りやろ。そやったらおまえはおまえのしたいようにすればええだけの話や」

「…そうだね」


安心した。真子はやっぱりわたしのことを一番に考えてくれていて、今の言葉を聞いてすごく嬉しかったし、わたしの気持ちは決まった。


「真子、わたしここに残る」

「おう」

「ひよ里にはわたしが居ないと駄目でしょ。そんでみんなのご飯作って、掃除して。たまにみんなが帰ってくるときは、またみんなで笑いあって」


真子もローズも拳西も心配性で、白は甘えたさんだから、みんなが来てくれるのは容易いことでしょう。そう言ったら真子はそやなァって微笑みながら言った。


「たまには帰って来てね」

「あほか。一週間に一回ぐらいで来たるわ」

「電話もしていい?」

「なんぼでも」

「浮気したら知らないからね」

「おまえこそ浮気すんなよ」

「しないよ、こんな素敵な彼氏さんがいるんだもの」

「あほか。照れるわ、やめい」


ふふって笑うと髪の毛をくしゃくしゃにして撫でられた。付き合ったときなんて真子に対して信頼とかそんなもの一個もなくて、でも110年間一緒にいて、喧嘩もしたりしたけどなんやかんやで別れるなんて出来なくて。


「あ、そや」

「ん?」

「これ、やるわ」


そう言って何処からともなく真子は丁寧にラッピングされた袋をわたしに差し出した。


「誕生日じゃないよ?」

「おまえやったら現世に残るやろなァって思って買っといたんや」


袋を開けるとそこには小さな小箱がひとつ。どうやらオルゴール機能があるらしく、ものをいれておくことも出来るし、オルゴールとして鳴らすことも出来るようだった。そして、真子から貰ったはじめての形が残るプレゼント。


「ずっと一緒におるから別に形あるものをプレゼントにしんくてもええやろって思ってたけどな、俺と過ごした時間とか全部今までありがとう、これからもよろしくって意味も込めて、これあげるわ」


いつもだけれど今日も饒舌だなって思いながらも、やっぱりその言葉は嬉しくて。どこからともなく笑顔が溢れる。やっぱりわたしの彼氏さんは世界で一番素敵だ。そんな真子の顔を見ると普段はそんなこと言わないからか珍しく少しだけ顔が赤くなっていた。




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企画参加させていただきました。ありがとうございました。

リーブラの思慕


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