アポロ





アポロチョコというチョコレートをご存知だろうか。そう、小さいギザギザのやつね。わたしはそのチョコを食べながらぼーっとしていた。
そしてあることを閃いてしまったのだ。仕事が多い割にろくな給料をくれないわたしの上司のお綺麗な顔が歪むのが見たい。
アポロチョコは、あれに似ている。わたしは閃いたまま、本人に言い放った。


「アポロのバーカ!乳首野郎!!」

「ヘルガー、殺していいですよ」

「嘘ですアポロ様ごめんなさいもう言いません」


あっさり殺されかけた。おいおい冗談だっての、もう、アポロ様ったらおカタいなあ。部下のジョークに一々キレてたら身がもちませんよ。口にだしていえる雰囲気じゃないけどさ。


「アポロ様アポロ様」

「なんです?」

「はい、乳首〜」


暇なのだとにかく。そしてアポロ様の表情を歪ませたいのだとにかく。半ばやけになって支給された手持ちのベトベターの胸あたりにアポロチョコをふたつ添えてみた。
もちろんダメ元だった。まあ怒りでも顔は歪むし。これでキレたらそこの窓から逃げて、うん、よし、いける。ラムダ様のところに匿ってもらおう。そこまで考えてから発した言葉だった。


「…ぶっ」


だけど目の前のアポロ様は、アポロ様は。


「…あ、アポロ、さま」

「…ふ、ふふっ…ふふふ、なにしてるんですか、おま、え、ふふふ、馬鹿ですねえ。」


笑っていた。すごく笑っていた。顔、崩れた!と喜びたかったところだが、意外すぎて驚いて、うまく言葉にならなかった。(というか笑っても綺麗なお顔でした。)
アポロ様は、こんなにも笑う人間だったのか。


「ふふふ…ふふ、ああ、よく笑った。久しぶりですよこんなに…ふっ、ふふふ、」

「あ、アポロ様?」

「べ、ベトベター。解放してやりなさい。ふふふ…かわいそうですよ、ふ、ふふ、。」

「あ、は、はい」


むしろわたしは動揺までしてしまっていた。ベトベターに添えたアポロチョコをとると、アポロ様はやっと笑いがおさまったようで、肩で息をしていた。


「…おっと。これは恥ずかしいところを見せてしまいましたね。」

「い、いえ、恥ずかしいネタを見せてしまい、あの、なんか、申し訳ないです。」

「……………っ、」


アポロ様は相当ツボだったらしい、笑いをこらえているようだ。
こんなに笑ってくれるならたまにこうやって危険おかして馬鹿なことをしに来てもいいかもしれない、なんてそれこそ馬鹿なことを考えてしまった。


「アポロ様っ」

「?」

「乳首!」


気分がよくなり、すっかり調子に乗ってしまったわたしはもう一度ベトベターに乳首を装着する。


「いい気にならないことです。…ヘルガー」

「いったあ!ヘルガーさん痛い!尻尾痛い!」


アポロ様はああ言ったけど、彼の口元が歪んでいたのをわたしは見逃さなかった!!
また来よう、絶対、馬鹿な考えは馬鹿な決心に変わってしまったようだ。



食べ物で遊んではけません

(アポロ様、はい、ベトベターにきのこの山ぶっ差して、ち●こ!)
(80点ですね)
(点数制!?そして高得点!!?)







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