猿代草太




「どう、して」

「どうして?だから言ったじゃん、復讐だよ復讐!」

私の目の前に立っているのは私の愛しい人。
の、はずだった。私の大好きな大好きな草太くんの、はずだった。
あまりに信じられなくて絶望感からか涙が出る。

「だって、草太くんは優しくて、友達、想い、で」

「ヒャハハ!!まだわかんないの頭悪いんじゃないの?演技だよ全部演技。ああそういえば名前チャンはよく動いてくれたよねえ!オレの為に証拠探して?一緒に行動してくれたおかげでアリバイまで作ってくれちゃって?最高じゃん!おかげで計画がうまく進んだんだ。キミと御剣検事には感謝しなくちゃねえ?」

「そ、うたくん、やめ」

「だってさあキミがいなかったらオレ今頃きっとあぶなかったんだ。馬乃介の事件で逮捕された時はもうダメかと思ったね!御剣検事が天才で、その天才に名前チャンみたいなあきらめの悪い子が協力してくれたからオレは助かったんだよ。そうだ、そう、だからホントに感謝しなくちゃ。そうそうねえキミ俺のこと好きだったんでしょ?チューでもしてあげよっか?ヒャハハハハ!!!」

「・・・やめて」

「なに?ねえハッキリいいなよ、ねえねえ何してほしい?抱きしめてあげようか?キスをしようか?それともグチャグチャに犯してほしい?#名前#チャンがそうしてほしいならいいよオレはそれ以上のことしてもらったし、」

「だったら」

ピタリ、と草太くんの耳触りな笑い声が止む。
(耳触りだなんて思う日が来るとは思わなかった。思いたくなかった)
その先の言葉が吐き出せずに詰まる私の目を正面から見据えるようにして、草太くんはぽつりと言った。


「ねえ。キライになった?」


目を見開く、
だって私が言おうとした、草太くんに最後にしてほしいことというのは。
「草太くん、」

「・・・・・・」

「私を、キライになって。」

お願いだから。お願いだから。
もう私も草太くん自身も苦しめないで。
草太くんが私を一言キライだと言えばそれで話がつくの、そうしたら私は消えてしまえる。
ねえ草太くん、貴方の目は。


「・・・・・・それはできないかな、」


ほら、また寂しそうな色をするんだ。



ゲーセット

(手詰まりだ)






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