少しでも、かっこいいって、思ってほしいんだ。
「ツナ!」
俺の名前をいつも元気に呼んでくれる名前。
彼女は俺の幼馴染み。弱虫な俺を、いつだって元気づけてくれた女の子。
そして、俺の好きな、女の子。
「どうしたの名前」
「聞いてよ!山本がさ!あたしの非常食のチョコ勝手に食べたんだよ!酷いよね!」
「ハハッ、わりーわりー腹減っててさー」
「絶対思ってないよね!この野球バカ!」
「アハハ…」
休み時間、俺は席に座りながら、二人の会話を聞いていた。名前と山本は気が合うみたいで、とっても仲がいい。
俺はそれを、いつも羨ましく見ているだけ。
俺だって、名前とは幼馴染みなんだから、話しはする。
そうじゃなくて、俺が羨ましいのは、山本がかっこいいってところ。
いつも明るくてクラスのムードメーカーで、おまけにスポーツ万能で、山本みたいにかっこいいやつ、中々いないよね。
俺も、山本みたいにかっこよくなれたら、名前に好きだって、言えるのに…
「ツナ?」
「…あ、ごめん!…あれ、山本は?」
「あー山本は友達に呼ばれて行っちゃった。…それよりツナ、何か考え事?」
「え…」
ほら、名前はいつも俺に何かあると、すぐに気づいてくれる。
「何でもないよ、ただ何となく、山本が羨ましいなぁって」
「山本?何で?」
「だって俺と違って、あんなにかっこいいし…」
「かっこいい?…あぁそっか!京子ちゃんのことか!」
だけど、こういうことには鈍いんだよな名前は。笑ってそう言った名前に俺は苦笑い。
京子ちゃんは、ただの憧れなのに。俺が好きなのは、名前なんだよ。
「まぁそうだよねー好きな子にはかっこいいって思われたいよねー」
「う、うん…」
「まぁでも、大丈夫だよツナなら!」
「い、いや、俺ダメツナだし…」
「何言ってるの!あたしはツナのこと、かっこいいって思ってるよ!」
ただ、落ち込んでた俺を励ます言葉だったかもしれない。だけど、単純な俺は好きな子が言ってくれたその言葉に、聞き返せずにはいられなくなって。
だって、今名前、俺のことかっこいいって言ったんだよな?
「ほ、本当に?」
「もちろん!まぁ確かにツナは弱虫なとこあるけど…」
「…アハハ」
「だけど本当に私が困ってるときはいつも助けてくれたし、誰にだって優しいし」
ツナは、かっこいいよ
うわ、ダメだ。俺今絶対顔赤い!
だけど、名前の言葉が嬉しくて、嬉しくて。
俺にも、まだ、望みがあるって思っていいのかな。名前の一言でこう思っちゃう俺って、やっぱり単純だ。
でも、それでも、
「頑張っても、いいのかな?」
「あったり前じゃん!」
「…ありがとう名前、俺、頑張ってみるよ」
「おう!頑張れーツナ応援してるよ!」
今はまだ俺のこと、ただの幼馴染みにしか、見てないかもしれないけど。
俺、もっともっとかっこよくなって、いつか名前に好きだって言うから。
それまで、待ってて。
君のためなら、俺はどんなことだってできる気がするんだ。