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テレビ越しのヒーローは子供達がピンチになるとやってくる
助けてと叫べばヒーローが登場しピンチを救って敵を倒してくれる…それは所詮テレビの中の話であって、現実にいるはずのないものを私は求めてしまった。
目の前には赤くて大きな物体。メガネをかける子供達の天敵、サッチー。そして今、私は大ピンチ…

テレビの中ならここでギュッっと目をつぶる。敵の攻撃がくるかと思えば未だにこなくて…そっと目を開けばヒーローの登場。
だけどそんな事あるはずない。だってそんな非現実的な事を求めたって現実ではありえないのだから。
子供達のヒーローはテレビと夢の中にしかいないのだ。

「ボク、サッチー」
「もうだめだ…」

もとはと言えば私の電脳ペットがいきなり逃げ出しちゃってそれを捕まえようとして…そしたら私は運悪く躓いて足を挫いてその場にしゃがみこんじゃって…そして更にサッチーまでもやってきた、と。
私のペットはまだ見つかってないし、逃げるにもこの足じゃ…結局サッチーにやられるし…。

「あはは。ほんと、最悪…」

こんな状況なのに笑ってしまう。諦めがついていたからかな。
でも、だけど…非現実的だとしても皆を救ってくれるヒーローを求めてしまう、奇跡起きないかな、なんて思いながら私は怖くて目をぎゅっと瞑った。
サッチーがレーザーを発射する準備の音がかすかに聞こえ身構える

(私のメガネが壊される…!)

「マテ!」

誰かの聞き覚えのあるような無いような…うろ覚えの声が聞こえた
私のメガネを撃ってても可笑しくないはずなのに、何の衝撃もない。私はゆっくりと目を開く。真っ暗だった視界に眩しい太陽の光が射した。

身構えていた手をどけ、顔を上げたそこには非現実的だと思っていた事が起きていた。ヒーロー…今の私にはそう見える。ピンチを救いに来てくれた正義のヒーロー。
それは隣のクラスの原川研一君、通称ハラケンがそこに立っていた。

「さちさん、立てる?」
「え、あぁ、うん」

私に手を差し伸べてくれたハラケン。私がその手を握ると立ち上がらせてくれた。
隣のクラスというのもあって、ちゃんと話したこともないのに彼は私の名前を知っていた、それは私も同じ事だけど。
手を握った時からなんだか体がだんだん熱くなってるような気がする…どきどきと言う音が聞こえてしまうんじゃないかという程、大きく高鳴る。

「今のうちに早く逃げよう」

立ち上がっても手を離そうとしなかった。私も、彼も。
夏の暑さのせいかな、それともこのどきどきのせい?手が汗で湿る。

(あぁ、これって…うん、そうだ)

突然手を引かれ走り出した。サッチーの横からすり抜ける。
後ろを見れば停止するサッチー、前を見れば私の手を離さず引っ張って連れて行くハラケン。彼の握る手はとても暖かい。
それにしてもどうしてサッチーは停止したんだろう?そんな疑問を抱きつつハラケンに引かれながら走る。挫いた足は少し痛むけど…

(今日の出来事は誰にも言わない。私とハラケンだけの秘密)



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