GX 短編 | ナノ



嘘はお前を振り向かせてくれる
君が振り向いて俺を見てくれれば、俺は魔法がかかったかのように笑顔になれるんだ。

「おーいさち!十代が探してたぜ」
「ほんとに?十代何か私に用事でも「うーそ!」
「………はい?」

あははと、ぽかんと呆れた顔のさちに笑うヨハン

またかと呟きながらさちは手に持っていたノートを筒のように丸めヨハンの頭を叩いた
手加減をしたつもりのようだったが思ったよりも少し強く叩かれ頭がじんと痛み、そこを手で撫でる。

「いって…」
「まったく、嘘つかないでよね!」
「だってよぉ。てか本当にひっかかりやすいよなお前」

またくくっと笑うヨハンにむすっと顔をし睨みながら筒状にしたノートを構えるさち

「ごめんごめん!悪かったって!」
「本当にそう思ってる?まったく、どうしていつも嘘ばっかりつくのかなぁ」

溜息をつき、丸めたノートを綺麗に戻す
さっきまで怒っていたのに今度は困った顔をする
百面相ってわけじゃないけど、表情がころころ変わるさちが可愛い。

つまりはあれだ
好きな女の子はいじめたくなるってやつだと思う。

「だって…嘘ついたら振り向いてくれて、こうやって馬鹿な事出来るだろ?」

ちょっと真剣な顔で、声も少しトーンを下げて言う
驚いたさちは目を見開いて顔を隠すように少し俯いた

「普通に呼べば振り向くからっ」
「あぁ、そうだな。悪い」
「それに嘘は泥棒の始まりだよ!」

顔を上げたさちと目が合う
頬がいつもより少し赤くなっていた、それを見た俺も顔が熱くなる
そして彼女はそれだけ言って長い廊下を走り去っていった。

怒っているような恥ずかしがってるような…嬉しそうだったなんて思うのは自惚れ過ぎか?

「泥棒してるのはさち、お前なんだぜ?」

あいつは気づいてるのかわからないけど、俺の気持ちはとっくに奪われてた…さちが好きなんだ。

俺もさちの気持ちが知りたい、俺を好きになって欲しい…だから俺は嘘をつく。
同じように奪いたい、俺と同じようにさちの気持ちを盗みたい。


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