GX 短編 | ナノ



俺がデュエルアカデミアに入学してきた時、一人目立ったやつが俺の視界に入った。
だがその時の俺にはどうでもいいことで、すぐその視界から消すように目を閉じた

「俺はこのデュエルアカデミアの王者になる」

それが俺のここでの目的
このデュエルアカデミアの試験でも軽々と合格。
手応えも無く面白みも無い
その時、俺の中では「弱い」「退屈」その言葉が浮かんだ
自分の目的を果たすのも時間の問題…そうも思えた

だが俺は初めてこのデュエルアカデミアの恐ろしさを知る

まだ何も見ていなかった、知っていなかった
俺の知らない所には化け物みたいなヤツがいるという事を。

「…嘘…だろ…この俺が…負けただとッ…」
「自分を過信しすぎだったみたいだね、残念でした!」
「くっ」

全校生徒、教員前で行われるイベントとも言える公開デュエルで俺は負けた
初めて負けた…しかも女相手に。

流れは順調だった。
俺の思い通りの展開に「またこいつも同じ」と思った
あっという間に展開は逆転し、俺のライフポイントは0と表示されデュエルは終了した。

初めての屈辱と自分の弱さを知った日であり、そして初めて俺の中にできた強敵の存在。

「クソッ!」

膝を付き、握った拳に悔しさを込めて床に拳を振り下ろす
鈍い音が聞こえ、その衝撃に手がじんじんと痛んだ。

「とても楽しかったよ、有難う」

そんな俺を見ながら彼女は一言残し、出入り口の方へと髪の毛をなびかせながら歩いて行く
顔を上げた時にはステージから降りていて、足音は少しずつ遠くなっていた。

俺はその背中に向かい声をかける

「名前…お前の名前は」

ゆっくりと振り返った時の彼女の顔は笑っていた
とても美しく明るい、素敵な笑顔。

「風龍蒔さち、さちで良いよ!またデュエルしようね、万丈目準君?」

「またね」と軽く手を振って止めていた足を進める
その後姿が見えなくなっても俺はさちが消えていった出入り口を見つめていた

そして気づいた。
俺が入学した時に視界に入ってきたやつの正体を

それがあいつだったんだ。

「風龍蒔さち」

小さく彼女の名を呟く
悔しかったはずなのに俺は笑っていた、不思議な気持ちだった

ここに来て、今日一日で初めてばかりを経験するとはな

初めての敗北、屈辱、強敵
そこから出来た目標と想い。

「ライバル…ってやつか」

いや、それは一方的になのかもしれない
あいつ…さちは俺をライバルとして見てくれるだろうか。

ずっと握ったままだった拳を解き、ふと鼻で笑う

「俺はもっと強くなる…いや、強くなって見せる。必ずお前の後ろを追いかけ追いついてやるさ…いや、追いこしてやる!」

そしてその時にはきっと、また別の想いをお前に抱いてるのかもしれない。




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