GX 短編 | ナノ

お前の笑顔が大好きなんだって言ったら笑われた

本当の事なのにさ。
でも、そんな笑顔も俺は大好きなんだよな

（後10秒……5･4･3･2･1…）

広い島に響き渡るチャイム
静かだった生徒達の声がざわざわと聞こえ始めた

「今日はここまでナノーネ。宿題は今言った所の復習、期限は明後日までナノーネ！」

クロノス先生の授業終了合図が出され各自休憩時間となった
十代は待ってました！と言う顔で急いで席を立ち、その場を離れる

行くところはいつも決まって同じ。

「さち！今日こそはデュエルやってくれるよな？」

同じ教室とは言え、広い教室でしかも席は真反対。
そんな彼女の元へと走るのが日課のようになった

十代に呼ばれ振り返るさちは困った顔をしながらも笑っていた

「だーめっ！デュエルはできませ－ん！私とデュエルしたければオベリスクブルーになってからにしなさいっ」

ベシッ、と音をたてて十代のおでこにデコピンが当たる
十代は額を押さえながら「ちぇ～」と悔しそうに言う

そんな姿に笑うさち

「じゃぁ次の授業でね！」

そう言って十代に背を向けて歩いてゆく
そんなさちの後ろ姿をジッと見つめる。

揺れる髪は太陽の光で輝き、沢山いる生徒の足音や喋ってる声が響く中で俺の耳にはさちの足音だけが特別に聞こえていた

俺はいつもさちに声をかける

笑顔が好きだから、アイツのことが好きだから。
だから毎日、いつも、ちょこっとでも良い

お前の笑った顔が見たいから

「さち！」
「？」

呼ばれたさちは歩くのを止め、十代の方に振り向く
そこには十代が笑顔で手を振っていた。

「授業遅れるなよ！」
「その言葉そっくりそのまま十代にお返しする！」

じゃぁね、と言うように軽く片手を振りまた足を進める

「さちー！」
「今度は何？」

さちは笑顔で楽しそうに振り返った

いつもいつも、同じような事をしてるのに嫌な顔一つしない
それどころか楽しそうにしてくれる。

そんな笑顔のお前が大好きなんだ

「ただ呼んでみた！」
「ありがとー！」

さちの笑顔が見たいから、名前を呼ぶ。

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