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蜜柑ママと棗ママ


 「久しぶりー!棗ー!」





  
 あー、本当に親子だったんだ

 見た目は似てるけど、この二人の親子の掛け合いが想像出来なかった



 

 馨さんは意外と息子ラブなのね




 なんとなしに二人のやり取りを見ていると母親の手を振り払って棗君がこちらに向かってきた

 愛ある掛け合いのせいですっかり忘れていた、こいつが鬼の子だということを






 「あいだだだ」

 頭を押さえつけられる



 体格差とか考慮してよ





 「…照れ隠し」

 ムッとしてつい、余計な口を利いてしまう




 後悔しても、後の祭り

 ベシッと後頭部に痛み



 お宅の息子さん野蛮ですよと馨さんに訴えようと顔を上げると、暖かい目でこちらを見つめる姿




 ゆっくりと近づいてきてぎゅうっと抱きしめられる

 決して、苦しくない力で





 何が起こったのか分からない

 でも、懐かしい、お母さんのような匂い




 「そろそろ、来ると思ってた

  ありがとうね、名前が棗を蜜柑ちゃんを、皆を守ってくれたんやね」



 結局、私の2年は無駄だったんじゃないかと

 皆を余計に追い詰めたんじゃないかと



 そんな考えが頭の隅を掠めるたびに、未来は分からない、自分の欲しい未来を手に入れるために足を止めるな、前を見ろと自分を戒めてきた




 「そう、未来は分からへん

  でも、名前のやったことは無駄なんかやない

  少しずつ、でも確実にいい方向に進んでるで」




 「…心、読まないでください」


 少しだけ、あの2年が報われた気がする




***
**
*







 懐かしい娘の姿


 産まれてすぐのこの子を、身を切るような想いで手離した




 それでも分かる

 この子は私の愛しい娘



 「お母さん…?」



 あぁ、何度夢見たことか




 もう二度と叶うことはないと思っていた

 もう会うことは出来ないと思っていた



 「…蜜柑っ」

 抱き寄せた蜜柑は別れたときとは、比べ物にもならないほど、大きくなっていた




 蜜柑の頬を伝う涙、私の娘の存在をまざまざと実感出来る


 もう二度と手離さない





 ありがとう、名前ちゃん…







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