裏道 | ナノ


KKの精神

 


※精神弱ってる系
※死ネタ









「またついてきてやがる」


 







「…AK」

「あー?」



久しぶりに双子の兄と一緒に仕事をした帰り道、いつもみたいに誰かの気配を感じて立ち止まる。

気配自体は2ヶ月以上前から感じるもので、それが他の奴には感じられない事はもう分かっていた。

とりあえず邪魔者を追っ払うとする。



「何だよKK」

「俺ちょっと用事あるから先に帰っててくれ」

「は?飯はー?」

「もう作ってある」

「お、マジか。今日はなんだっけ?」

「麻婆豆腐」

「じゃあレンジの出番か」

「爆発させんなよ」

「させねーよ!…多分」

「分かったら帰れって」

「おー、気ぃつけろー」



普段のらくらしていてもアレで中々勘の鋭い奴だから、大人しく帰ったのは俺が何をしたいか分かっているからだと思う。

暗闇に消えていくAKの姿を見送って、隠す様子も見せない分かりやすい気配の方へ振り向く。



「さて」



一言呟くと、奴が姿を表す。

漫画みたいに顔の所だけ建物の陰に隠れているから顔は見えないが、見る気は無いから別にいい。

それよりもいい加減、ストーカーみたいな事をやめてほしい。

仕事の帰りだけでもうんざりしているのに、1ヶ月前くらいから外を出歩くと常に見張られている気がするし、最近じゃ家の中に居ても気配を感じるようになった。

そのせいか、ただでさえ浅い眠りは更に浅く、一日に1時間寝ているか寝てないかくらいだ。

そろそろ話をつけるべきだろう、と思った俺は相手に銃を向けた。



「てめぇ、いい加減にしろよ」

「……………」



何の返答も無い。

いつも通りだが、今日は何か違和感を感じる。



「…何か喋ったらどうだ?」

「…………」



やっぱり喋らない。

が、いつもはポケットに入ったまま動かなかった奴の右手が俺に銃を向けた。

同じ、型?



「俺と早撃ち競争でもしようってか?」

「……………」

「それとも、ただの見栄張りか?」

「……………」



ジャリ。

小石を踏んだような音が響く。

だが俺は一歩も動いてない。

と言う事は、奴が動いた?

一歩一歩、ゆっくりと近づいてくる足音。

不意に街灯が消えた。

慣れている筈の緊迫した空気に心臓がうるさく動く。

パッと、街灯がつくとそこには。



「…俺?」

「…よぅ、俺」



俺がいた。

双子の兄じゃない。

まさに、【俺】が目の前に立っていた。



「誰だてめぇ」

「だから、お前だって」




「じゃあ何で俺がいる」

「むしろ、何でお前は俺が見える」

「それはこっちが聞きてぇ」

「俺も聞きてぇな」

「…てめぇの名前は」

「Mr.KKに決まってるだろ。お前は?」

「俺がMr.KKだ」

「俺もMr.KKだ」

「違う、お前は俺じゃない。俺が俺だ」

「違わない。俺はお前でお前は俺だ」

「何を証拠にそんな事を」

「そうだな、今日の晩飯は麻婆豆腐、昨日はAKのせいで肉買い忘れて豆腐ハンバーグがメインだったよな。一昨日は確か…ロールキャベツで」

「黙れ!」



得意げに、さも自分がやったかのように話す奴に少し苛立つ。

何で、そんな事知ってんだ。

手に力が入って今にも撃ちぬきそうだ。

それを知ってか知らずか、奴はペラペラと喋り続ける。



「お前が言ったんだろ。じゃあ次は…最近の仕事でも振り返ってみるか?えーっと今日は確かAKと二人で殲滅戦だったよな。敵の大ボスがまさに漫画から出てきたんじゃねぇかってくらい悪役顔でAKと笑ったな。昨日は一人でマフィア一つ潰すだけの簡単なお仕事だった。一昨日はニッキーとCD争奪戦して4日前は」

「黙れってんだよ!」



一発、奴の体へ撃ち込んだ。

筈なのに。

何故か目の前が一瞬で真っ赤になって全身が熱かった。

そこからは覚えてない。

意識がすっ飛ぶ直前に聞き慣れた俺の声が耳元で響いた。



「ざまあみろ」











 ― 二日後






「おいAK」

「あー?んだよじーさん」

「お前いい加減沈んでねぇで仕事をだな」

「俺は裏しか請け負わねーって何回言や済むんだよ」

「KKがいねぇんだからお前がやれ」

「俺をKKの代わりにすんな」

「仮にも双子だろうが」

「双子だけどよ、別に沈んでねーし悲しんでもねー」

「じゃあ何でその記事見てんだ」

「…いや、あんな完璧だった弟が悲惨だと思って」

「悲惨?事故だろ、あれは」

「事故じゃねーよ。ありゃ自殺だ」

「何でそう思う?」

「アイツ幻影見てたからな。自分の見た夢に怯えて死んだんだから滑稽だよなーって」

「…助けてやらなかったのか」

「助けられねーんだよ。アイツの精神の問題だから」

「とりあえずMr.KKっていう凄腕がいねぇ今はお前が看板なんだからな、働けよ」

「だから裏だけならっつってんじゃんよー。おーいじーさん聞いてんのかー?」




ポップン新聞【夜中の大爆発】
★月◇日深夜2時ごろ、廃工場で大きな爆発があった。廃工場は民家などから離れた場所にあった為、被害はなかった工場は全焼した。火が消し止められた工場内から一人の焼死体が発見されその男性の身元は東京都音立区に住んでいた「警固屋 景」さん(29)と判明。出火当時、警固屋さんはその工場で何をしていたのかは未だに分かっていないが、ポップン警察は遺体の状況から事故、または自殺の可能性が高いとしている。


















自分の精神に追い詰められて死んだKKさんという話。AKさんはKKさんが死んでも別に沈まない気がする。死んだらまぁ仕方ないかー程度。撃ったのは油の入ったポリ缶。廃材の中に油とかもあって一気に爆発。巻き込まれて死んだ。っていう感じ。

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