裏道 | ナノ


ボツケンジさん






ケンジさんとの出会い、ボツ話。








とある場所に橋がある。

その橋には幽霊がいるという。

幽霊はいつも夕方に橋の真中に座ってギターを弾いて歌うらしい。

いつからかそんな噂が立ち始めた橋は、今や人が寄り付かなくなった。



「噂だろ」

「いやー実はこれが結構マジらしいんですよ」

「へぇ、そこにハジメを放り込んで放置して帰るのも手か」

「ちょ、兄キ?!」



学生から聞いた噂話を本気にしているハジメに呆れているDTOともし本当なら面白そうだと思っているマジメは授業が終わった放課後、教員室でのんびりしていた。

のだが、先ほどの話を聞いたマジメが突拍子も無い事を言い出す。



「じゃあその噂、本当かどうか確かめてみようぜ」

「アンタ子供か」

「…まさか、先輩怖いんですね!」

「ハジメ、お前後で川に沈めていいよな」

「え?!」



ハジメにそう言われては、DTOとしては行かない訳にも行かず、結局その橋へ教師三人は行く事になった。




今は夕暮れ時。

子供達は家に帰ってそろそろ夕食を食べようか、という時間だ。

既に相当薄暗く、枝垂桜やソメイヨシノなど数種の桜が乱れ咲く中にポツン、とある橋はかなり怪しく見えた。



「居ませんねー」

「やっぱ噂は噂って事だ」

「…ん?」

「あれ、どうしたんスか兄」

「黙れハジメ」

「痛っ」



橋には誰の姿もなく、どこをどう見てもただの橋でしかない。

所詮噂、と言って帰ろうとした瞬間、マジメが立ち止まった。

ハジメが何事かと声をかければ、黙れと言って拳が頭の上に落とされた。

流石に気になったDTOは耳をすませていた。

するとかすかにギターの音が聞こえる。



「…これは、ギター?」

「噂は本当だったみたいだな」

「うおー!早く会ってみ」

「黙れって言ってんじゃねーか」

「ギャン!」



ギターの音に興奮したハジメを、マジメが黙らせる。

どこから聞こえているのか、とマジメとDTOが辺りを見回すもどこにも誰も居ない。

しかし、ギターの音は確実に大きくなっている。

ふと、マジメが橋の方を見た。

誰か、居る。



「おい、修ちゃん、ハジメ」

「だからそう呼ぶなって…あ?」

「あれ、あの人さっき居ましたっけ?」



ギターを弾く男が、橋の隅に座っている。

下を向いていて、顔はよく見えないが若そうな事だけは分かる。

そんな怪しさ満点の男にマジメが声をかけた。



「おい」

「………」



反応はない。



「おい、そこでギター弾いてるお前」

「………僕ですか?」



小さな声で返事が来る。



「お前以外にこの場でギター弾いてる奴いんのか?」

「居ませんね」

「だからお前だろ」



マジメはイラついているのか、不機嫌そうな声で言葉を続ける。



「僕に、何の御用でしょう」

「お前が噂の幽霊ってやつだろ」

「噂、ですか」

「どうなんだよ」

「いやぁ」



僕が見える人など居なかったので、声をかけて頂いて嬉しく思います。


男はギターを弾くのを止めたかと思うと、パッと此方を向いた。

暗がりで見える筈のないのに、その男ははっきりと見え、此方を向く目はとてつもなく黒く、濃く、深い闇だった。

その目を見たハジメが叫ぶ。



「うわぁっ!」

「ハジメ?」

「く、来るな、こっちに来るなっ」



あの目を見ただけで錯乱状態に陥ったようだ。








と、ここで気力切れ。ゆーれいなケンジさんもいいと思うんですが。話が合わせづらかった。

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