裏道 | ナノ


はろうぃんまくらっき






「蒔ーっ!見て見て見て見て!」

「!………」



開いた口が塞がらないとはこの事なのか。

ここ数日姿を見ないと思ったら、いきなり現れたソイツ。

何があったのか、背中には立派な白い羽。

いや羽っていうかもう普通に翼です。



「…幸、何それ」

「何って、普通に羽」

「いや、何で生えてんだ!」

「え?神様がハロウィンだからって」



あぁ、なるほど。

幸の言う神は、音神ではなくこの世界そのものの事を指している。

って事は、世界にはろうぃんだからって羽生やされた上に。



「普段は着ないよーなスーツ着てるのか」

「そうそう!似合うだろ!」

「むしろ遠目からだと誰?」

「えっ酷い」



事実だ。

空兄や景兄に見せても遠目からじゃあ、バンダナでしか判断出来ないんじゃないのか。

とりあえずハロウィンだとか言うものに浮かれてる幸に呆れた。

世界の玩具にされてんじゃねーか。



「で?」

「え?」

「そのハロウィンとやらが何だってんだよ」

「えーっ蒔は知らないの?」

「興味ねぇし」

「トリックオアトリート!」

「…は?」



何だそれ。

聞いた事あるような無いような。

確か凄く面倒な事を言っていた気がする。



「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞっ!って意味だよー」

「持ってねーよ」

「じゃあ悪戯決定ー」



何する気なんだろうか。

幸の気が済むまで「まっくん」とかだったりしたら、殺しかねないんだけど。

少し身構えていると、体に違和感。



「……痒い」

「悪戯完了ーっ」

「…何が変わったんだ?」

「はいっ鏡!」



覗き込むと右目の辺りに刺青。

よく見ると耳も若干形が違うし、ていうか着物が別物になってる。

俺、ズボンとか嫌いなんだけど、動きにくいから。

しかし何でこんな事に、と思っていれば足元を何かが這う感触。

思わず足元の何かに刀を突き刺すも、それはうねうねと動いていた。

一体何だし、と下に目を向ければ白い蛇が2匹。

するすると俺の体に巻きついていく。



「…蛇?」

「うわっ、まっく…蒔すげーかっこいい!」

「つうか何これ」



悪戯ってこれ?

こんな事誰が出来るんだ、と一瞬だけ考えたがすぐに答えは出た。

世界以外に見当たらないからだ。

アイツしかいない、こんなの楽しんでる奴。



「はー…疲れた、すっげ疲れた」

「まだ何もしてないじゃん!」

「いやもう色々疲れた、帰る」

「えーっ!」



俺より年上の筈の幸はまるで幼児のように駄々をこね始めた。

むしろ俺に何をしろってんだよ。



「じゃあ何しろってんだよ」

「ほら!ハロウィン!ハロウィン!合言葉!」

「あー…たるい」

「良いから言ってよー!」

「はいはいとりっくおあとりーと?」

「棒読み!」

「別にいいだろが!」



棒読みの何が悪い。

とりあえずは言ったんだからこれで終わりにしてほしい。

幸の答えを待っていると、何かが顔に飛んできた。

反射的に手で取ってみたら、小さなイチゴ味の飴が3つ。

これがお菓子、ねぇ?



「少な」

「し、仕方ないじゃん!間に合わせなんだから!」

「あーもう、分かった分かったこれでいい」



どっちが年上なのか分かりゃしない。

とりあえず帰るか、と幸に背を向けようとすると一声。



「「トリックオアトリート?」」



声が二つ?

勢いよく振り返れば幸の隣に超笑顔な世界。

うわぁ、殴り殺してぇ。



「…あ?」

「おー怖い怖い、今日はハロウィンなんだし戦闘禁止な」

「っざけんなよてめ」

「蒔っ、トリックオアトリートだって!」

「……………」



幸が居ちゃ、世界とまともに喋れもしない。

でも俺お菓子なんて持ってな…。



「じゃーこれで」

「……ってこれ俺があげた飴じゃん!」

「あ?俺にも?」

「お前ら二人が言ったんだからな」



どっちかに渡し損ねればそれこそめんどくさい。

飴を一つずつ投げ渡して、さっさと帰る事にした。







「あ、まっくん帰っちゃった…」

「しっかし飴投げて寄越すとはなぁ」

「ぶー、渡さなかったら俺の気が済むまでまっくんて呼ぼうと思ってたのに」

「ホントだぜ、俺に渡さなかったらお前の気が済むまで呼ばせるつもりだったのに」

「「非常に残念」」





「ぶえっくし!…………寒…(寒さとは別に何か嫌な予感がする)」












まくらっき楽しいです。まっくんホントにツンデレになっちゃったね!予想外!最初はただのブラコンだったのになぁ。

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