世界ミミ
※タイニャミ←MZDが前提
※ミミ=世界さんの嫁の生まれ変わり
※ニャミ=MZDの嫁の生まれ変わり
※↑をMZDと世界さんのみ既知
※詳しくは表日記の神の嫁をどうぞ←
らしくないけど、つーかこんなん、息子共に見られたら馬鹿にされそうだけども。
俺は今、キキョウの花を一輪持って、この世界を創ってから唯一の愛する人の所に向かっている。
…言ってて恥ずかしいのは内緒だ。
でも息子にも嫁と言う妻がいたように、俺にも嫁と言う妻がいた。
だからこそ、この左手の薬指には今でもちゃんと指輪をしている。
「いた」と、過去形なのは相手が「寿命ある人」だから。
死んではいけない「世界」の俺と、死んでしまう「人」の彼女が一緒にいるなんて、本来なら世界の法則にでも逆らう事だ。
一度だけ彼女に死なないようにしようと、相談を持ちかけたがすっぱりと断られた。
「私は私の、人としての寿命を全うして、それでまた生まれ変わっていくから」
「だから、貴方は生まれ変わった私を見つけて?」
「見つけてくれたら、絶対に魂の底から貴方の事を思い出すわ」
美しい人だった。
可愛らしい人だった。
強い人だった。
とにかく俺は、彼女が、大切で大切で仕方なかった。
その彼女がやっとこの世に出てきたのだ。
今までにも確かに生まれ変わってくれたが、人というのはやっぱり寿命に逆らえないものである。
生まれ変わるその度に何回も、死に別れてきた。
またそうなるのだろう、と思えば思考は暗くなりさえすれ、今この時、彼女が傍にいてくれるのなら大した問題ではない。
俺が、ずっと待っていればいいのだから。
愛する彼女に、もうすぐ、会える。
「それでさーダーリンってば、慌ててすっ転んじゃって!」
「あははっタイマー焦りすぎ!」
「そ、そんなに笑わないでよミミちゃん」
「しっかしホント熱いねーあー熱い熱い」
「えー?そうー?」
「そうかなー?」
「二人して嫌味か!コノヤロー!」
「えっ、じょ冗談だって!ごめんってばミミちゃん!」
「ご、ごめんね…あ、僕はまだ仕事が残ってるから…またね、ニャミちゃん、ミミちゃん」
「じゃあ明日ねダーリン!」
「また次の仕事でねー」
「しかし羨ましいわ…」
「何が?」
「何でニャミちゃんには旦那がいるのに私にはいないの!」
「神とかどうよ」
「MZDはいらん」
「ミミちゃんてばMZDの扱いの酷さに定評あるよねー」
「いやいやそんなー照れるぅー」
「えっ褒めてないんだけど」
「えっ嘘っ!」
「いやホントに」
「えーっ褒めてよ…っ!?」
「…ミミちゃん?」
「うー…何か、急に頭痛い…」
「ちょ、大丈夫?」
「何でだろ…さっきMZD馬鹿にしたから?」
「それは無い無い!だって当然じゃん」
「あっはは、ニャミちゃんも扱いの酷さに定評が…っ」
「ストップ!喋るのやめっ!とりあえず家に帰ろう?」
「う、うん…ごめんねニャミちゃん…」
「いーのいーの!ミミちゃんに何かあったら凄く心配なんだからねっ」
「ニャミちゃ……あ…無理、っぽい…」
「え、ちょ、ちょっと、ミミちゃんっ?!」
見つけた。
そう思った瞬間、目に入ったのは倒れる彼女。
スローモーションで見えるその一秒一秒の内に、俺は思わず彼女の体を支えていた。
しまった、俺は表に出ちゃいけないのに。
「…MZD?」
かけられた声にハッとする。
どうするべきか、息子を装ってとりあえず逃げるか、それともいっそ言ってしまうか。
だが息子は話していない筈だ、MZDの妻の生まれ変わりが己だと言う事を。
それに今の息子の嫁には周知の恋仲がいる。
言わないが吉、だろう。
「び…っくりしたぜー」
「むしろこっちがびっくりなんだけど!」
「いやー悪ぃ悪ぃ、何か俺の話してるのが耳に入ったから見てたらいきなり倒れんだもん」
「あーっ!やっぱりミミちゃんの頭痛ってMZDでしょ!」
「んな訳ねーだろ、それとも、本気でそう思ってんのか、ニャミ?」
「う、そう、じゃない…けど…」
とりあえずはこの場から離れる事にした。
俺の姿の事もあるが、何より彼女が心配だから。
おいそこ、笑ってんじゃねーよ。
「これでよし、っと」
「はー疲れた」
「これくらいでへばってちゃー神なんてやってられないんじゃないのー?」
「まぁそうだけどよー」
現在地、彼女の住居。
やっぱり年月と言うものは文明の違いを鮮明に教えてくれる。
部屋には中々性能のいいものが揃っていた。
物珍しそうに部屋を見ていたのに気付かれたのか、ニヤニヤと笑いながら声をかけられる。
「あっれー?もしかしてMZDってばミミちゃんの部屋初めて〜?」
「…それがどーしたよ」
「じゃあミミちゃんの部屋を見た感想!」
「は?」
「いいから、感想」
「…じゃあ、簡単に言えばもうちょっと女の子らしくだな」
「うわーひどーい」
「うっせー」
だけども事実、この部屋は壁紙や天井、小物こそ可愛いものではあるが家具家電などの大部分はいたってシンプルな白や黒ばかり。
これが男の部屋だったら少し驚きはするがそんな大差無い気さえする。
部屋を見ていて、彼女は変わらない、と思った。
いつだってシンプルな部屋にモノクロを基調としたものを置いていた。
さて、そろそろ王子様はお姫様の所に行きたいんだが。
「で、MZDはどーすんの?」
「は?」
「ま、まっさか、一人で寝てる乙女の部屋に居座るなんて事は」
「…どーすっかなー」
「言っとくけど、ミミちゃんの王子様は私だから!」
「え?お前はタイマーの王子様だろ?」
「普通そこは逆じゃない?」
「タイマーのほうがお姫様っぽいよな」
「ダーリンが聞いたら怒るよそれ」
「別にいーんじゃねーの」
「うわー超テキトー」
うだうだ話をして、残るか否かをうやむやにしていると、その事に気付いたのかニャミはさっさと玄関へと向かってしまった。
「あーもう!だったら私は帰るけど、ミミちゃんを襲ったら本気で殴るからね!」
「別に襲わねーよ!」
「ミミちゃんから聞くんだから…!」
「襲ったりしねーって、マジで」
「じゃあちゃんとミミちゃんが起きるまでいてよねっ」
「はいはいっと」
「それじゃ!」
パタン、という小さな音と共に嵐が過ぎ去った後のような安心感を覚える。
玄関から彼女の部屋へ行こうとすると、部屋の前に寝ていた筈の彼女の姿が。
「起きたか、大丈夫かよお前ー」
「う、ん…大丈夫」
何やら元気が無い。
俺の事を思い出してくれたのか、思い出してくれていないのか分からないから、俺自身で喋る事が出来ない。
次の言葉をどうするか迷っていると、不意に抱きつかれた。
「…ミミ?」
「世界さん」
「!」
普段、表にいる俺の存在は基本的に「MZD」として認識される。
俺自身が「世界」だとでも言わない限り、ほぼ永遠に。
だけど彼女は俺を「世界さん」と、そう呼んだ。
一瞬目を見張ったが、すぐに顔が緩みに緩んだ。
静かに彼女の背中に両手を回して抱きしめる。
「お帰り、俺の愛する人」
いつでもキキョウの花を、彼女に。
世界さんが世界さんじゃない!とかいうツッコミは受け付けない!らぶらぶしててほしい。それはもうタイニャミが嫉妬するほど(←)ちなみにキキョウの花言葉は「変わらぬ愛」「気品」「誠実」「従順」。今回は変わらぬ愛をチョイス。ほかにも千日紅の「変わらぬ愛情を永遠に」とか赤いアネモネで「君を愛す」とかあったんだけど桔梗で。何がどうってとりあえず書けたから満足した。
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