■ 第三十三爪

 


何だろう。

俺ものすごーく小動物な気持ち。

もう今すぐとって食われそうな…。

それ程までに、目の前の人が怖いですハイ。



誰だこの人。33
〜半兵衛の策(初級)〜



「えーっと…あのー…」

「……………」



ひぃぃぃいいい!

この人怖い!殺気が痛い!

な、何でこんなに怒ってんだ?

びくびくと怯えながらも、恐ろしいお母さ…ゲホゲホ、風魔さんに問いかける。



「あのー…何故そんなにお怒りなのでしょうか…」

「……………………………(ジーッ

「すみません本気で分からないので教えて下さい」



あまりの恐ろしさに全力で土下座しました。

いや、流石にこたに勝てないし。

それにお母さ…ゲッホゲホン、それにお世話になってるからね!


土下座をしてみても何の動きも無く、少し気になって顔を上げてみる。

と、既にいませんでした。


な、何だと?!


え?!何で来たの?!

もしかして松永への現状報告?!

え、何それすっげ困る!

はっ…も、もしや…見捨てられたとか…?!

あああああごめんなさい勝手に行動してごめんなさい!

でも俺泣かない!

だってそんな性格なんだもん☆

あ、ごめんなさい石投げないで。

とか何とか一人芝居をしているとガチャン、と何か鉄製のものが落ちたような音がした。

何事かと思って見てみると、牢の扉が開いていた。

…アレ?まさか錠を破壊しちゃいましたか?

と、思ったけどどうやら鍵を脅し取った様子。

もう一方の手には空皐が握られていた。

逃げていた時には気付かなかったが、鞘にも血が付いていたようで、既に乾き切って暗がりだと黒い装飾にしかみえない。

一先ず牢から出て大きく伸びをする。



「んぉー…!…っふー……助けて頂き有難う御座いました!」

「……………(空皐差出

「空皐も、見つけてくれてありがとな」



空皐を受け取って、改めて鞘を見る。

乾いた血を触ってみると軽くパキ、と音がして剥がれていった。

ふと、こたがジッと俺の服を見ている事に気付いた。

…あ、いっけね☆

あ、いや☆使ってすみませんごめんなさい。

あの、ほら、血がそのままになってました。

どうやら何があったのかと、困惑しているみたいだ。

…いやまぁ、こんな血だらけになった事無かったしね。

何て言い訳をしようか、と思っていると殺気が更に強まった気がした。

ていうか、完全にパワーアップしてますよね。

本気で怒られるんじゃないのかと怯えていて、顔に向かって手が伸びてきたのを見て目を瞑った。

顔面からガッツリ殴られんのかと思ってたけど何の衝撃も無く、頭にポン、と手が置かれた。

そしてそのままワシャワシャと髪を乱される。



「うおぉ?!ちょ、やめ、髪がっ!」

「………………(ワシャワシャ

「いやだから止め」

「…………………(首を左右に振りつつ手は止めず



物凄く子ども扱いされてる気がする。

って言ったらどっかの誰かさんが「その通りだ」とか言うんだろうね。

あ、何か蹴り倒したくなってきた。



…と、まぁ冗談はさておき。

90%ほど本気だったけど。

一先ずこの豊臣さん家から逃げる事にした。

いつまでもこの雰囲気の中、居たくなかったから。

って言うのは建前で。

本音はもうちょっと甲斐から離れたかった。

尾張も地図的には近いし、ならこのまま西へ行こうぜ的な。

なので毛利さん家の方へ向かっていこうと思います。

緑の妖精さん見れるかなーとか運よくアニキとかいないかなーとか。

まぁそんな事を考えつつ大阪城を抜け出してきました。

凄く簡単に抜け出せたんだけどこれでいいのか竹中半兵衛!?

まぁいいや。

自己完結しながら、豊臣さん家の人に見つからないよう、こたの指示の元、城内を歩いていく。




そして誰にも見つからずに、門をくぐり抜けられた。

ここで見つかっては水の泡なので、さっさと茂みに隠れる。

そしてこれからどうするかを聞いてみた。



「さて、風魔さんや、風魔さんはこの後どうするんだい?」

「………………(スッと書簡差出

「え?松永から?」



歩きながら手紙を受け取り何事だ、と思い広げてみる。

すると、紙のど真ん中に大きく縦書きで


「定期的に連絡されたし」


とだけ書いてあった。

オイ待て松永お前これでいいのか。

せめて普通に文章書けや。

少しイラッとした俺は空皐を鞘から抜き、手紙を一刀両断して、切り刻んだ。

あースッキリした。

まぁ、でも定期的に連絡すればどこに行ってもOKって事ですよね。

ワーイ、旅の許可が下りたー(棒読み)

じゃあさっさと西へ行くか。



「オクラーオクラー緑の妖精ー」



暢気に歩き出すも、こたがついてこない。

不思議に思って、声をかけようと後ろを振り向きながら歩いていると誰かにぶつかった。

というか壁に当たった。


あっれー壁とかあったっ………。

前を向いたら壁じゃなくてまさかの豊臣秀吉。

あ、こたはコイツが見えてたんですね。

早く言ってくれよ!



「あるぇー軽く抜け出せたと思ったら…お前のせいかよ」

「こうして逃げようとする事は分かっていたからね」

「一種のエスパーですね分かります」

「えす…よく分からないけれど、褒め言葉として受け取っておくよ」

「受け取んなよ」

「そんな事よりも、もう逃がさないよ」

「そんな事?!こた、そんな事って言われた!」

「……………(武器構え

「あれっ、戦闘体制ッスか」

「戦う気かい?君達は決して勝てないというのに」

「何で?」



半兵衛が片手を軽く挙げれば、ザザザザザッと兵が俺らを取り囲んだ。

え?何この絶対絶命っぽい状況。

周りをキョロキョロと見回していると、秀吉は兵が持ってきたらしい椅子に着席してやがりました。

何か敗北感。



「僕一人では勝てないようだからね。今回は秀吉と僕、そして城中の兵士が相手になるよ」

「城中…あぁ、だから城の中に兵がいなかったんですねコノヤロー」

「一応最低限の警備はさせていたんだけれどね」

「最低限過ぎだろ…つーか秀吉の相手しながらお前と兵士も相手しろと?どこの関ヶ原だよ

「この状況から君達は、いや…零龍君、君は絶対逃げられない」

「え、俺限定?」

「風魔君は傭兵だからね。雇えばいい」

「どっちにしろ豊臣に入る気は無いんですけど」

「そうかい?それなら先に風魔君を雇い入れようか」



この展開を既に読んでいたのか、パチン、と指を鳴らした。

すると兵の一人が、何かが入った袋をこたの前に差し出す。



「風魔君、足りないならば言ってくれ。君を雇う為なら惜しみはしない」

「お前ホントに先読みの半兵衛でいいんじゃねーの」



どうやら本気でこたを雇おうとしてるらしい。

傭兵であるし、収入は大きい方がいいだろうから、受け取るのかなーと思っていた。

まぁ、松永は扱い荒いしな。

こたは一度は袋を見るも、先ほどより殺気を大きくした。

…それは受け取らないって事でいいんですよね、風魔さん?

内心ホッとしました。



「…受け取らないのかい?」

「… 、 、 、 、 (口パク

「受け取らぬ、か…つまり君も秀吉に刃向かうんだね」

「も?って事は俺を豊臣に入れるのは諦めたって事でいいんだよな」

「色々と策を講じてみたけれど、どうやら君達には三択を迫るしかないようだ」

「竹中半兵衛でも無駄に考えるんだ…意外…」

「と、言うより君が予想外すぎるだけさ」

「さいですか」

「そろそろ決めてもらおうか」

「何を」

「力ずくか、死か、諦めるて下るか」

「あれ?諦めたんじゃなかったの」

「一言も言ってないけれど」

「無言は肯定だろ」

「無言でも無かっただろう?」

「ああ言えばこう言うですね分かりました。つーか死って何だよ」

「豊臣の下に来ないのなら危ないものは早くに処分してしまうのが上策だよ」

「俺は物かよコラ」

「それに、風魔君を雇うには君を豊臣に引き入れるか、消してしまう他に無いみたいだからね」

「そんなにこた雇いたいのかよ」

「伝説の忍と呼ばれているんだ、どこの大名も欲しがるものだろう?」

「ふーん…とりあえずめんどくせーからもう力ずくを選択」

「力ずく…か、秀吉、そろそろ出番だよ」



半兵衛が振り返りながら秀吉を見るも、全く反応しない。

無視しているのか、聞こえてないのか。

まず秀吉だから半兵衛は無視しないだろうなーと予想。

て、事は聞こえてない事になる。

何で聞こえてないんだ、と考えていると決定的な一言が。



「zz…」

「秀吉、アンタ寝てやがりますか起きろコラ」



寝てんじゃねぇよコノヤロー!

え?この状況で寝れるのこの人。

半兵衛は予想外過ぎた事態だったらしく、数秒固まった後、秀吉を起こしていた。



「………………っ、ひ、秀吉っ!起きてくれ!」

「……む、半兵衛…話は済んだか」

「豊臣には下らない、力ずくでここを突破するそうだよ」

「そうか…貴様らは今ここで摘まねば、我の日ノ本を滅ぼしかねん」

「摘まねばって俺らは植物かオイ。でも秀吉なら大木とか普通に引っこ抜きそうだよね」



え?KY?いいんだよ自覚してるから。

つーかちょっといいですか。


誰がお前の日本だって?


無駄に強調してんじゃねぇよ。

勘違いしてんじゃねぇぞオイ!

お前まだ統一しちゃいねぇだろ!

こんな奴に天下渡すのもあれだよね。

っていうか世界に通用すると本気で思ってんのか、秀吉。

未来を知ってるから言えるぞ。

元の世界の歴史と同じ展開とまでは行かないだろうけど、このままだと似たような展開になりそうな気がする。

困るんだよなーそういうの。

また何万、何十万、何百万と消えるじゃねぇか。

困るんだよなー。



「うんうん困る困るめっちゃ困る」

「…何の話だい?」

「未来の話」

「ほう、我が日ノ本を統一する話か?」

「んな訳ねーだろ猿が」

「じゃあどの未来の話か聞かせてほしいね」

「お前がこのまま天下統一したら、この日ノ本は真っ先に潰されて終わるって話だよ」

「この我の日ノ本が世界には敵わぬと?」

「強調すんな。ま、日ノ本なんてのは南蛮からすればただの粋がってる雑魚って所だな」

「貴様にはこの日ノ本の大きさが分からぬのか」

「そりゃアンタだろうよ。そもそも鉄砲も南蛮から伝わったもの、今こうしてる間も鉄砲がどんどん改良されてんだぜ?」

「それがどうした!この我の手に掴めぬものは」

「人の話を聞け猿。…それにお前には掴めねぇもん、あるだろ」

「君は…秀吉に、掴めないものがあるという。それは一体何だい?」

「心とか、世界とか、強さとかな」

「心…?弱み…?そのようなもの!持っていようとも無駄なだけよ!」

「そうでもないけどな」



何かこの人たち相手にするの疲れてきたよ。

こたは警戒しているものの、今すぐ戦るぞって感じじゃなくなったし。

流石伝説、話長くなるのを分かってるな。

じゃあもうちょっと話してから逃げますか。










終わっとけよ

――――――――――ミ☆
長くなりそうな予感
小太郎、ちょくちょく出てくるなぁ
これもう松永寄りとかじゃないよね
まぁそれは横に投げ置いて

34爪の展開全く一切考えてません
常にそうですけどね!←
さてどうするか
バトるか逃げるか遊ぶか逃げるか
過度な期待はしないようお願いします

ここまで見て頂き有難う御座いました。


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