黒白、白黒
ずっとずっと、終わりの歌を歌っていたら、世界は消えて真っ黒になった。
何も無い。
そんな中でずっとずっと終わりの歌を歌っているのに、自分だけは消えなかった。
何でだろう、なんて考えながら歌っていたけど、終わりの歌を歌うのに飽きてきた。
だから、終わりの歌を逆に、歌ってみたんだ。
終わりの歌の、終わりから、終わりの歌の、始まりの方へ。
そうして歌っていたら、気付けば。
世界が出来ていた。
「世界が出来た」
「否、巻き戻っただけだ」
「君は誰?」
「オレはお前」
「君はおれ?」
「あぁ」
「名前は?」
「そんなもの、ない」
「どうして?」
「さて、どうしてなのか、お前は分かるかな?」
「わかんない」
「ま、そんなもんだろうな」
黒は終わりの歌を歌って、飽きたら終わりの歌を逆に歌った。
白は黒の隣で、その様子をずっと見ているだけだった。
何度も何度も、それを繰り返して。
世界は消えては巻き戻り、消えては巻き戻った。
「ねぇ」
「何だ」
「名前、君がつけてよ」
「オレには無理だ」
「どうして?」
「オレは終わりだから」
「君は終わりなの?」
「あぁ、それで、お前が始まり」
「おれが始まり?」
「だからお前が名付ければいい」
「…不思議だね」
「何が?」
「おれは黒だけど始まりなのに」
「オレは白だけど終わりなのが」
「不思議だね」
「そうか?」
「だって、世界の始まりを歌うのに」
「始まりを歌う時は真っ黒だろ、だからだよ」
「終わりを歌う時は真っ白なの?」
「あぁ、だって終わりを歌えば世界は段々真っ黒になって、始まりを歌えば世界は段々真っ白になるんだから」
「ふーん」
「…分かってるのか?」
「よくわかんない」
「まぁ、大体そんなもんだろ」
けど、不思議だね。
何がだ?
どうしておれ達が、終わりと始まりなんだろう。
それは多分これが、オレ達にしか出来ないから。
ねぇ誰が決めたの?どうしておれ達だったのさ。
それは分からない、多分オレ達が決めたんだろ。
おれ達は一体誰に、どうして創られたんだろう。
それは分からない。
不思議だね。
あぁ、そうだな。
その世界は終わりと始まりを繰り返して、長い長い時が経った。
気付けば、二人に姿が出来ていた。
だけど未だ、二人には名前が無かった。
「ねぇ、名前欲しいね」
「…そうだな」
「おれは始まりだからって、おれが名付けてもいいの?」
「あぁ、その方がいい」
「じゃあ、おれが『黒』で、君は『白』!」
「まんまじゃないか」
「ちゃんと読みは違うんだよ」
「ほう」
「おれは『ネロ』で、君が『ワイス』だよ」
「何語だ?」
「何となく思いついたの」
名前が出来た黒と白は、時たま会話をしながらも、また世界の終わりと始まりを歌った。
今度は黒が始まりを歌って、黒が飽きたら、白が終わりを歌う。
お互いが交互に歌い、世界は消えては巻き戻った。
「ネロ」
「なぁに、ワイス」
「…いや、何でもない」
「?変なのー」
白は知っていた。
自分達は『存在しないもの』なのだと言う事を。
世界は終わりを歌えば消えて、始まりを歌えば巻き戻る。
だが、それは自分達には通じなかった。
自分達は一つの時間の中で、真っ直ぐその道を歩いている。
世界は同じ場所を、ずっと歩いているのに。
それは世界と同じ所に居ないのと一緒。
世界に、追い出されたも同じなのだ。
白は思った。
オレやネロの事を、知ってほしい、と。
そんな事を思って、また長い年月が過ぎた頃。
黒と白に不思議な出来事が。
「ねぇねぇ、ワイスー!」
「どうし…!?」
「凄いよ!影が動いてるよ!」
「いやそれは分かった、夢だ」
「えー、ワイスも動いてるよ?」
「!?」
しかも喋る!凄い!
何でこんな事に…。
まるでもう一人の自分みたいだね。
…そう、だな。
影は自分。
だが、アイツも影。
どちらも影になりうる。
なのに、何故。
影が出来た?
ある日、歌い続ける黒と白の元に来る筈の無いものが届いた。
白い封筒に入った一通の手紙。
「何々、それ何?」
「…手紙、だろ」
黒は興味津々、白は恐る恐る手紙を読み上げた。
『前略 異世界の俺達へ。
初めまして、異世界の俺達。
今回この手紙を送ったのは二人に俺の世界へ来て欲しいからだ。
そろそろ世界の歌を歌うのは飽きたんじゃないか?
まぁ、飽きていようといなかろうと、来てもらうつもりなんだが。
気に入ってくれたなら、住んでもいいし、気に入らなかったらその世界に帰す事も出来る。
どちらにしろ、一度こっちに来てほしいんだ。
そして、俺と話をしてほしい。
来てくれるの、待ってるぜ!
MZD 黒』
「…行ってみたいなぁ」
「…行くか?」
「いいの!?」
「あぁ、オレは飽きてきたところだし」
「おれも少し飽きてたんだーやった!」
それに、この世界はもう壊れているのだから。
「早くー!ワイス行こうよー!」
「あぁ、すぐ行く!」
――さようなら、壊れた世界。
「あー来るかなー来ねぇのかなー…」
「何をそんなに心配してるんだ、神様」
「いやほら、前の手紙の事だよ」
「…来るんじゃないのか?」
「だといいけどな…」
≪かみさまーおきゃくさまだよー≫
「おー!」
「ほら」
「…オレ達を呼んだのは、お前か?」
「あぁ、俺が呼んだ」
「わ、同じ姿だ!」
「だろ?とりあえず上がれよ」
「まずは自己紹介といくか」
「俺はMZD、始まりの白だ」
「俺は黒、終わりの黒」
「…おれ達とは逆なんだね」
「そうだな。お前達も、教えてくれよ、名前」
「おれはネロ、始まりの黒だよ」
「オレはワイス、終わりの白だ」
「ネロとワイス、ね。ようこそ、俺の世界へ!」
――そしてお帰り、消し去られた昔の俺達。
黒白、白黒
(終わりの歌っていたら)
(終わりを歌う俺が居た)
(だから逆再生みたいに歌ってみたら)
(消えた筈の世界は巻き戻ってしまった)
――――――――――*
PMP2見てつい←
文中か名前にリナシタって入れたかったんですが難しくて諦めました←
リナシタ1Pがネロ、リナシタ2Pがワイスです。
ネロとワイスは我が家のループの輪からズレた軌道のMZD。
でも世界がその軌道を直した為に、存在しなかった事にされた。
的な。
神が12人になったよ←
ここまで見て頂き有難う御座いました!
prev / next