気がつけば茜色の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。いったい何時間寝ていたのだろう。そもそもどうやって帰ってきたのか分からない。
 自室のベッドに靴を履いたまま横たわっていた。洋服もそのままだ。枕元にあるはずのクマちゃんだけが床に転がっていた。多分、ディアナがどこからかからベッドの上へ"落ちて"きた衝撃でベッドから飛び出たのだろう。
 ディアナがこの能力を使うことは滅多にない。しかし今日のように感情がたかぶると無意識に使ってしまうことがある。帰路で家に帰りたいと強く願った結果だろうか。
 久しぶりに能力を使ったせいか懐かしい夢を見た。

「ディアナ、今からお父さんを迎えにいきましょ。その後皆で夕飯を食べにいきましょう」
 下の階から養母の声が聞こえる。
 ズキズキと頭が痛む。今日は最悪な日だ。できればこのまま昼寝の続きと洒落こみたい所だ。
「はぁーい!今準備するー!待ってて」
 できるだけ明るい声で返事をする。
 昨日の今日であれだけ喜んで話した友人に嫌われたなんて切り出すこともできず。

「そういえば、あのときは空気に耐えかねて逃げ出しちゃったけど、彼らにも何か理由があったのかもしれない」
 ハンガーラックからレースのついたカーデガンを取り出す。
「人間そんな悪い人ばかりじゃないしね、うん。きっと理由があるんだ」
 鏡台にうつる顔は適度な昼寝で赤みを取り戻していた。
「明日、もう一度会って話を聞こう」
 扉を開き、片手に車のキーを持つ母親の元へと向かった。


*******


 所変わって東方邸。テーブルに置かれたコップに牛乳を注ぎながら、電話で話し込んでいるのは仗助。
 あたりはすっかり暗くなっていた。
「ねぇ、ブランドーってただの同姓同名かも知れないじゃあないか」
 電話の向こうの声は広瀬康一のものだ。
「バカヤロー!こういう時に偶然ディオ・ブランドーってェ名前の血縁者がいる奴がポンポン杜王町に来てたまるかよ」
「それは…でも偶然かも…」
「脅威は彼女自身じゃないかも知れねェ。が、だ。偶然だと決めつけるのも危険だぜ。俺たちだけじゃあねェ、この町に住むすべての人間に危険が及ぶかもしれねェんだ」
「そうだね…かわいそうだけどちょっと距離を置くしか無いのかな…」
「ああ、確かに"矢"は承太郎さんとSP財団によって秘密裏に回収された。でもよォ、杜王町で短期間にスタンド使いが多く出現したって事実は隠しきれたとは言えねェ」
「うん…DIOが掌握していた人々が何かあるかもって嗅ぎ付け始めたんだってね。…その、手紙、読んだよ」
「あぁ、DIOによって不利益を被った派閥とDIOを崇拝し続ける派閥が、この春の長期休暇中の観光者に紛れて潜り込んでくる可能性は大いにある」
「できればここに矢はないと早めに知ってすぐ出ていってくれればいいんだけど」
「どうだかなァ…DIO派と反DIO派がぶつかったら面倒だ。その中にスタンド使いがいないとも限らねェしよォ…」
「スタンド使い同士はひかれあう…万が一出会ってしまったら僕たちも迎え撃つしかないんだね」
「ああ…康一ィィ、死ぬなよ」
「こ、怖いこと言わないでよ」
「ハハッ大丈夫だって!康一にはあのプッツン由花子がついてるもんなァ〜?」
「仗助くん、その言い方いい加減やめてよ。僕だって怒るよ」
「はっは、ワリイワリイ」

 言って、並々と牛乳が注がれたコップを持ち上げ自室へと向かう。子機に持ち変え、「ちょっと移動するぜェ〜」と言った瞬間だった。
 ドンッという銃声のような音が表から飛び込んできた。
「な、今の音…!」
「聞こえたか、康一ィ…ちょっくら様子見てくるぜ」
「気をつけて」

 子機を置き、サッとリーゼントを整えて外へ飛び出す。母親は仕事でまだ帰ってきていなかった。
 表へ出ると同じく銃声を聞いたであろう億泰の姿があった。億泰はこの国で銃声なんてと半信半疑のようだったが、仗助の顔を見て確信した。
「オイ、聞いたかよォ〜さっきの音」
「あぁ、ついに来やがったぜ」
 銃声の音がした方向からはタイヤが激しく道路と擦れる音が響いていた。


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