クーラーの効いた部屋、私と仙蔵さんは二人で横になっていた。狭い部屋のため、クーラーは効きがいい。涼しいからと、私は仙蔵さんにすり寄る。仙蔵さんは、応えるように私の背中に腕をまわしてくれた。

「あったかいです。」
「そうか。」
「もっとひっついてもいいですか?」
「別にかまわん。」

ありがとうございます、と顔を薄い胸板に寄せる。とくんとくんとくん。私と違って、心臓は規則的に動いている。仙蔵さんは、あまり恥ずかしくないのだろうか。私は少し恥ずかしくて、緊張しているというのに。さすが、だな。余裕であろう仙蔵さんの表情を頭に浮かべ、目を閉じる。温かくて、安心する。このまま、ずっとこのままだったらいいのに。
そう願う私の気持ちなんか打ち砕くかのように、仙蔵さんの携帯は音をたてた。

「すまない。」

仙蔵さんは起き上がって、携帯を開く。それからまもなく着ていた服を整え、一言帰ると言われた。いつものことだから、いつも通りの返答をして、背を向ける。ガチャリ。仙蔵さんはじゃあなと言い残しドアの向こうへと行ってしまった。ドアが薄いため、仙蔵さんの足音が遠ざかっていくのが分かる。…今、仙蔵さんはあの人の所へと向かっているんだろうな。そう思うと無性に泣きたくなった。

私は、仙蔵さんの二番目だ。仙蔵さんには一番愛してる人がいて、その人はすでに仙蔵さんと婚姻関係になっている。私は身を退かなければならないということは承知しているけど、未だに諦めきれなくて、二番目という立場を棄てられずに、この状態を甘んじている。どうしようもないのだ。私が仙蔵さんを愛していることは本当で、その愛だって本物だ。どうしても、離れることが、できない。

仙蔵さんは、いつでも私を捨てられる。それを知っていて、私はこりずに仙蔵さんに愛を告げ、愛をもってふれる。なにも、返してもらえないというのに。愛なんか、向けてもらえないというのに。

いっそ、仙蔵さんを縛りつけるモノがあったらいいのに。
そう考えては何も装飾されていない指を見つめ、ひとり泣いた。


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