貴方と私は会うべきではなかった

ぽつりと紅唇から零れた言葉は酷く悲しいものであった。何故だと問えば「何故だと思う?」と逆に問うてきた。私が質問すれば逆に問い返される。これはよくあることだった。いつもなら笑って言えた。わからないから聞いているのだ、と。でも今は違う。

解るから。何を?
解ってしまえているから。何を?
既にわかっていたから。何を?
前から。会ったときから。何を?


ずっと前からいけないことだと。言葉を交わすのも。触れあうのも。再び会おうとするのも。
周りに気づかれぬように彼女の元へと訪れて、柔らかい笑みを見せてくれる貴方に恋をしてしまって。駄目だ、駄目だとわかっていながらも再び会いそしてそれを繰り返す。自分が使える王を馬鹿なものだと悪態をつくが、それなら自分の方がよっぽど愚かで馬鹿だと泣き叫ぶ。

今日こそ終わりにしよう、
うん。明日こそ、うん。今度こそ、うん。

終わりは見えない。明日も見えない。今日は今日とて霞む。それが嫌ででも会いたくて。接吻を交わすことさえできないのに何が愛だと、何が恋だと。会う度に自分の仲間に申し訳なくて息もできないくらい胸が締め付けられていっそこのまま窒息死して死にたいとそう思った。仲間の隣に立って叱咤する自分が憎たらしくてしかたなくてそれは彼女も同じで会う度に体の所々に痣ができていて痛々しい笑みしか見せてくれなくなった貴方にどう償えばいいんだろう。すみません、と笑って謝れば許してくれるんだろうか愛想笑いで優しく。


私はシンに仕える者、貴方はシンを暗殺するためにシンドリアへ来た暗殺者

この立場を分けていて、私らの胸を縛り付ける細く深い落ちてしまえば終わりの崖の役目を果たす境界線を壊し、私と貴方が愛し合えるような日々が来るようなことはないのでしょう?


そう、それならばうんと優しく私の心を殺してください

そうしたら救われる気がするんだ。

さあ、早く。この首に手をかけて

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