めんまが死んだあの時から時間が止まったみたいだった、だけれど確実に関係性は変わっていてわたしは夏が近づくとじぐざぐの傷痕だけを残した胸が苦しくなる。超平和バスターズというものを名乗って遊んでいたのが夢みたい、今おもえばちょっとだけ周りから浮いた子供が自分達で心を補うための集まりだったようにおもう。もしも、もしもめんまが見えるようになったなんてじんたんの妄想だったらなにか変わったのかなあ。ちょっとだけひさしぶりに顔を合わせたゆきあつは幾分か荒んでいてしまっていてなんだかショックだったよ、それにつるこが当然のように隣にいて臍を曲げるわたしだけが成長していないみたいでむかつく、めんまを忘れられなくて女装するゆきあつなんて見たくなんてなかったのにわたしは柔らかな感情をもて余すことしか出来ていない。なんでも見透かしているような瞳をするつるこがなんとなくちょっとだけ苦手だった、マイペースな装いで彼を掠め取らってしまいそうでこわかった。この先もゆきあつはわたしを見てくれない、心までみすみす振り向いてはくれないってわかっているのに魔法にかけられたみたいに恋心が消え失せてくれないの。なんとなくあなるのことが羨ましかったのはどうしてだろう、それ以上にめんまのことが妬ましかったのはきっとただの無自覚でもゆきあつの恋心を離さないから。じとりと生暖かい空気が流れる夏なんてきらい、過去を思い出させようとする夏なんてきらい、めんまを連れて行った夏なんてきらい、ゆきあつのすきなおんなのこはめんまなんだって刷り込んでくる夏なんてきらい、超平和バスターズがちぐはぐな子供の集まりだったのはわかりきっていたけれど無理矢理に離そうとした夏なんてだっいきらい。

「ねえ」
「なんだよ」
「……ううん、やっぱりなんでもない」
「はあ?」

わたしは今さら彼になにを聞こうとしたのか自分でもよくわからなくて、ぐるぐるもやもやしたきもちわるさだけが残る。腕を組んで壁にもたれかかるゆきあつに「……暑いね」と爪先に引っかかった話題を投げた「……暑いな」彼は胸元のカッターシャツをぱたぱた扇ぎ空気を取り込む。生暖かい風もいやだけど無風は些か暑すぎる。ゆきあつは未だにめんまを過去の恋心だって片付けられない、わたしは未だにゆきあつを過去の恋心だって片付けられない。みんなだってそうだ、こんな妙なお揃いなんていらないのに。このまま夏なんて滅んでしまえば彼はわたしを見るかと言ったら、否になる。ゆきあつの想いを目の当たりにしたって涙なんか今さら流れないし、わたしはいくら傷ついても泣かないよ。だって泣いちゃったら認めてしまうことになる、じんたんのようにゆきあつがめんまをすきなことも事実でしかないけれど絶対に涙は流してあげない。

「息苦しいなあ」

小さなわたしは幼かったからこそ噎せかえるようなあまく笑うめんまになりたかった、ゆきあつと恋がしたかった。ふにゃふにゃ柔らかく笑うあの子がひっそり疎ましくて、花の蜜のようにあまい空気にくらくら憧れるわたしは彼女みたいになれはしない。みんなが大切だった、わたしはなんだかんだ爛漫にいつでも笑っていためんまがすきだ、几帳面で頭でっかちでつんとしている癖にやさしいゆきあつがだいすきだ。亡くしてしまう夏は受け入れられないけれど幼い自分達を消してしまうのはちょっぴり抵抗があるなんて我が儘な子供かもしれなくても、わたしはまだ子供でいいから全てを亡くすことも受け入れることも出来ない。

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