※年齢操作有り





「いたっ」


ぴりっとてのひらに鋭い痛みが走った。見れば切れて血が出ている。手裏剣の持ち方、間違えたかな。切れた手をじっと見つめてその場に座り込んだ。

今日はお昼に手裏剣の授業があった。初めて持った手裏剣は薄くてすごく鋭くて当たったら痛そうだなあと思った。シナ先生がみんなに配って投げ方を教えて的に当ててみて、と言った。みんな上手く出来るかなあとか言いながらわくわくしていた。わたしはまだ一年生だから的は低い位置にあるし近い場所のものだった。一番目の子が的とかつっと手裏剣を当てたからみんなでわいわい盛り上がった。出だしがよかったのか次の子もその次の子も当てた。それがわたしの自信につながって、わたしにも出来ると思った。

だけど実際やってみると思ったように飛ばないし変な方向へ行ってしまって結局わたしの手裏剣は的に当たらなかった。的に当てれなかったのは、わたしだけだった。


「…ひ、く…っ」


悔しくて悔しくてすごく嫌だった。みんなが出来てわたしだけが出来ないなんて嫌すぎる。わたしだってみんなと同じように授業をしてるのになんで。シナ先生は練習すれば大丈夫、って言ってたけど、こうして練習したってやっぱり手裏剣は当たらない。地面に散らばってるだけだ。悔しくて悔しくてかっこ悪いのに涙が出てきた。しばらく俯いて泣いてたら後ろからザリ、と足音が聞こえてわたしは慌てて振り返った。先生かな。クラスの子かも。だけどそこにいたのは忍たまの中在家長次だった。


「…なによ」

「…泣いてるこえが、きこえたから」


長次はスタスタとわたしに近付いて来る。わたしは無視して自分の膝に顎を乗せた。長次は散らばった手裏剣と傷のない的を見て全部察したみたいで無表情のままわたしを見下ろしてくる。かと思えば膝を折ってわたしの顔を覗き込んできた。泣いてる顔を見られるのが嫌で急いで拭いて長次をギッと睨み付ける。


「どうせへただって思ってるんでしょ」

「…思ってない…」

「…え?」

「がんばるひとは、えらいひと…」


長次の手がわたしの頭を優しくぽんぽんなでる。同級生になでられるのは少し恥ずかしかったけどそれ以上にうれしかった。涙もすっかり引っ込んだ。長次はわたしの切れた手を見ると目を丸くする。血、びっくりしちゃったかな。背中に隠そうとしたら手首をつかまれた。胸元から手拭いを取り出してわたしの手にくるくると巻いていく。巻き終わると長次は立ち上がって的の周りに散らばった手裏剣を拾い出した。その様子をポカンと眺める。長次ってふしぎなひと。手当てしてもらった手をさすっていたら長次が手裏剣を持って戻ってきた。一枚手に取って構えてひゅんっと手裏剣を投げる。手裏剣は見事的に命中。しかもど真ん中だ。


「すご…」

「…肩の力を抜いてやるとだいじょうぶ…」


手裏剣を差し出されて、恐る恐る一枚取る。長次の真似をして構えて言われた通りに肩の力を抜く。さっきの長次みたいにひゅんっと投げたら、的とは違う方向に逸れてしまった。


「……」

「脇を締めて、もっと手首をつかって…」


がんばれ、と手裏剣を一枚手渡された。…すぐ出来る訳ないもんね。気を引き締めてもう一度手裏剣を構えた。足を肩幅に開いて肩の力を抜いて、脇を締めて手首を使う。長次に言われたことを何度も心で反復して指先にぐっと力を篭めた。

ひゅんっと投げた手裏剣は、外側に近かったけどちゃんと的に当たった。


「…あたった」

「……」

「長次!あたった!」

「…おめでとう…」

「ありがと、うぅ…っ」


やっと当たったことがうれしくてうれしくて思わず長次に飛び付いた。それから感動してつい泣き出してしまった。当たらないかと思ってた。わたしにはむりなんだって。あきらめかけてたから、だからすごくうれしい。長次は何も言わずわたしの頭や背中をなでてくれた。ほんとうに長次ってふしぎなひと。ありがとう、ありがとうって何度も呟いた。


負け犬

優位


(まだまだこれからよ!)






昔のものを修正して/点

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