ギャアギャアと騒ぐクルーを見ながらビールを喉に流す。アルコールが食道を滑る感覚の心地好いこと!くらくらとした目眩すら面白い。今日はいいね、今日は酒が美味い。ふと視界の隅で縄でぐるぐる巻きにされたエースを捕らえた。エースは笑いながらやめろだの離せだの叫んでいたけどそれが聞き入れられることはなく、ジョズやラクヨウの手によって海に放り投げられていた。能力者であるエースは泳げない為タイミングを計ってサッチが海へ飛び込む。船の外から「年越しに殺す気かこのやろォ!」なんて楽しそうなエースの声がした。

今日は年を越すという一年に一度だけのめでたい日でありエースの誕生日でもある。ダブルでめでたい日だ。エースは上機嫌だし、嬉しいのかオヤジもバカみたいに酒を飲んでるけどそれをナースが咎めることは無い。今日くらいは好きに飲みたいし飲ませてあげたいよねェ。いいこといいこと。海から上がってきたエースが樽から直接酒を飲み始めた。周りはそれをやんややんやと囃し立てている。いいぞもっとやれー、とあたしも手を叩いた。


「飲み過ぎじゃねェかい」

「んんん、いいじゃんよ」

「いいとも。ほれ乾杯」

「かんぱァい!」


あたしの隣へどっかりと腰を下ろしたマルコの肩に寄り掛かる。マルコの持つジョッキに自分のジョッキをがつんとぶつけて、また一気にビールを嚥下した。マルコも結構な量を飲んだらしい、目尻が赤らんでいる。触れている肩も熱かった。って、それはあたしもかな。よく分からない。考えがまとまらない。ただただ楽しくて、楽しかった。


「また年が明けたよい」

「明けたねェ」

「今年もよろしく」

「うんうんよろしく」


へらへらと笑いながらマルコを見上げると、そっと瞼に酒臭い唇が触れた。少し離れて視線が交わると、普段ならひどく恥ずかしい筈なのに、アルコールの所為かあたしはまたへらへらと笑った。マルコも笑ってあたしの肩を引き寄せた。肩を抱くと言うよりは肩を組むと言うのが正解に近い。お互いに汗ばんだ頬を擦り合わせて、声に出して笑った。

ふと船首から絶叫に近い大声が聞こえた。ふたり一緒に視線をやってみると、エースの隊の奴らが「エース隊長おめでとうございますァアアアアア!」とか叫びながら海に飛び込んでいた。エースはエースでゲラゲラ笑っている。それを見たサッチが「エース愛してんぞ!」って叫んで海に飛び込んだ。次にハルタが「みんな今年もよろしくな!」って飛び込んで、イゾウが「オヤジ大好きだ!」って。みんな羽目外してんなァってマルコが呟いた。オヤジがグラララって笑ってる。それを見たら居ても立ってもいられなくて、あたしも船首へと走った。


「オヤジィ!」

「なんだァ馬鹿娘!」

「長生きしろよ大好きだ!」


ふらふらする足で船首へと立ってオヤジへの愛を叫ぶ。オヤジが楽しそうな顔をしてくれたからすごく嬉しかった。それから身体ごと動かしてマルコを見る。マルコは目を丸くしていた。


「マルコォ!」

「…なんだよい!」

「去年よりもっとなァ!」


すうっと息を吸い込むと目眩がして、あたしは海へと投げ出された。綺麗な星空を見上げながら両手を伸ばす。胸はすっからかんだったけど、あたしは世界で一番、満たされていたのだ。


「今年はずぅううッと愛してるぞばかやろォオオオ!」


どぼォん!と派手な音を出しながらあたしは海へと落っこちた。暗闇できらきら光る水中であたしはまたへらへら笑う。ごぼごぼと泡になったあたしの笑い声はきっと、止むことなんかないのだ。





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