好<<<愛




会長総愛され/非王道/王道視点/ギャグ


「なんでだよ!なんでみんな俺のこと好きにならないんだよ!!」

この学校はおかしい。

「え、そりゃあ......」

皆一様に口を揃えて、こう言うのだ。



「「「会長が好きだから」」」




好〈〈〈 愛




みんな俺を邪険にする。邪魔だと言う。
挙げ句の果てに「うるさいどっか行け」って!!
家や地元ではみんな俺のことを好いてくれたのに!
だから、この学校はおかしいんだ!
きっとみんなその「会長」ってヤツに騙されてるか、脅されているかに違いない。
可哀想に!俺が助けてやるからな、待ってろよみんな!

というわけでまずはその会長を知らなければならない俺は、てきとーに人に聞いてみることにした。

「なあ、」
「あっ!お前は生徒会の皆様に近付こうとするモジャモジャ!今日こそ許さないんだから!!」
「会長ってどんなヤツなんだ?」
「会長って......生徒会会長のこと?ちょっと!シトウ様に手を出すつもりなの?!」
「違う!どんなヤツかと思って」
「カッコよくて素敵で可愛いお方だよ!」
「俺より......?」
「はあ?当たり前だろ突き落とすぞコノヤロー」

うう、最後はよくわかんないけどガチ切れされた......。
他の人にも聞いたけど、ほとんどがそんな会話だった。

会長はカッコよくて素敵でなんでもできて可愛くて甘い物が好きでみんな抱きたい?らしい。
......カッコよくて可愛いってどういう事だ?意味がわからない!
しかもみんな俺よりって!俺のが数倍いいのに!

未だに会長というのがわからなくて廊下でうんうん悩んでいると、前からキレイな金髪の生徒が歩いて来た。一目でわかる、あの綺麗な人は京一しかいない!

「きょーいち!」

名前を呼んで走りよれば、京一は王子様みたいに背中に一緒に居た人を隠して一歩進み出た。

「君は転校生の」
「一姫だよ!かーずーきっ!」
「変な名前の転校生が、なにか用ですか」
「京一が見えたからさ、つい!」
「つい、で話しかけないでください。それに何度も言うようですが、下の名前で呼ばないでいただけます?」
「何言ってんだよ!俺達友達だろ!」
「貴方といつ友達になったんですか」

もう本当に京一は恥ずかしがりやだなあ!俺が仲良くしてやってんのに、しょうがないヤツ!
ついと俺から視線を離した京一を見て、そう言えばと思い出す。

「京一って確か、生徒会だったよな!」
「......そうですが、なにか?」
「生徒会長ってどんなヤツだ?!」
「っ!」

びくりと反応したのは、今まで京一のうしろに隠れて居たヤツだった。

「京一!そいつ誰だ!?」
「貴方には関係のない人です。さっさと何処かへ行きなさい」

覗き込もうとすれば、京一は背中と壁の間に入れて隠してしまう。
ああもう、俺に隠し事なんてすんなよな!

「いいじゃんか!ほら、お前も隠れてないで出てこいよ!恥ずかしがりやさんか!?」
「やめなさい!」

京一の背後に強引に手を入れて、そいつの腕を掴んで引っ張り出した。
あまりにも力が無くて、そのまま俺に突進してきたソイツを抱き止める。あれ、意外と軽い......?

「やっと出てきたな!オイ、顔見せろよ!名前はなんて言うんだ!?」
「っ、るせ、」

腕の中でビクリと体を震わせたソイツの髪は黒い。きちんと手入れされて艶があった。
うわ、なんか甘い良い匂いがする!シャンプーかな。

「オイ、さっさと顔見せろって!俺は金谷一姫って言うんだ!」
「............」
「早く言えよ!言わねーと......」
「紫藤春日だ」

シトウハルガ。
そう名乗ったヤツは、ふいにきっと俺をにらみあげてきた。
そこでやっと俺は春日の顔を見ることができたのだ。

「......っ、」

筋の通った鼻に、青の目を縁取った長い睫毛。最後に全体的に白い肌。
圧倒的な美貌に、思わず呼吸が止まったかと思った。
それくらい、綺麗だ。

「は、春日って言うんだな?よろしくな!」
「......お前は生徒会長を探してたみたいだな」
「え?あ、ああ!そうなんだ!」

顔を近付けられて一気に体温が上がった。
う、うわ、近い!!
春日はは、と嘲笑うみたいに息を吐き出すと、開き直ったように言った。

「喜べ、この俺が生徒会長だ」

「えっ、」

春日がみんなを騙している生徒会長......?
ウソだろ、こんな綺麗なのに!

「俺になにか用事があったようだが?」
「......あ、っ!」

う、そうか、そうだよな!友達の俺が正してやんなきゃ!

「春日!もうみんなを騙すのをやめろよな!」
「は?」
「言い掛かりはやめてください」

言えば、春日はワケがわからないと首を傾げるし(あ、可愛い)京一は珍しく感情的になって俺を見た。

「お前がみんなを騙して好き好き言わせてんだろ!そのせいでみんな俺の事なんか見向きもしない!」
「いや当たり前だろモサモサ」

自分の姿を見てみろと苦笑を漏らした春日をそのまま廊下の壁に押し付けた。
きゃあっと周りから悲鳴が起きた所で、人だかりが出来ていることに気付いたがどうでも良かった。

「今なら許してやるよ!な!」
「な、なにが「な!」だよ、ふざけんな......っ!」
「いいから、謝れよほら!騙してごめんなさいって!俺が許すから!」
「っ顔、近付けんな、クソ......っ!」

よく見れば、春日が若干涙目だった。
顔を赤くして俺を見上げてくる姿は酷く扇情的で、思わず喉が鳴った。

「はるが、」


「オイこら、テメー誰のに手ぇ出してやがんだ」


真横から声が聞こえた瞬間、俺は春日から無理矢理引き剥がされた。なんだよ、今俺は春日と喋ってんのに!

「!アキっ、」
「ああ、ハル、大丈夫だったか?触られたトコ腐ってねーか?傷ひとつでも付いてたら俺がコイツを磨り潰して魚の餌にしてやるから安心しろ」
「それは犯罪だからやめろ」
「平気だ、警察にはバレねえように上手くやる」
「違う!」

呆然として見れば、アレは確か、風紀委員長の、

「秋穂!おれが春日と話してたんだろ!邪魔すんなよ!」
「邪魔してんのはテメーだ転校生死ね」
「だから俺は一姫だってば!」
「知らね」

けっと鼻で笑う秋穂は、腕の中に春日を抱いて悪態をつく。
その隣で、京一が春日がケガないかぺたぺたと触れていて、春日がすごく鬱陶しそうだった。

「......っ秋穂もなのかよ!?」
「ああ?」
「秋穂も春日が好きなのか!みんな春日に騙されてんのか!?」
「好きっつーか......」

そこで一旦言葉を切ると、秋穂は春日を見下ろす。
きょとんとした顔で首を傾げる春日が、訝しげに声を上げた。

「な、なんだよ」
「いや、なんつーか、」

そしてくすぐったそうに秋穂は笑うと、可愛らしいそれではない、噛みつくという表現がぴったりな程の口づけを、この大衆のど真ん中でなんの躊躇もなく春日にほどこした。

きゃーという悲鳴が再び巻き起こる。
そりゃあもう、さっきの比じゃないくらいに。

「!?あ、あなたは春日に何をしているんです!?」

一足先に我に返った京一が、声を張り上げて秋穂に掴みかかる。
しかし秋穂はそれを無視し、未だに口をあんぐりと開いていた俺に向かって言った。



「わりいな、好きなんじゃねえ。『愛』してんだ」



きゃああああ!!とこの日一番の悲鳴が学校中に響き渡った。


* * *

変なとこで区切っちゃいました。

一応風紀委員長×生徒会長なつもり。
この後転校生+生徒会VS風紀委員長とかやれば美味しいです。
2011,1024.

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