生徒会会計が、自分の嫁は料理が上手いと鼻高々にしつこく言っていた。
決してそれを羨んだわけではない。なにせ俺の嫁は生活能力の欠片など一切持ち合わせていない。スキルは筋力に全振りしてあった。
だから、ほんの少しだけ。本当に、ちょびっと、米粒ほど小さな好奇心が芽生えただけ。

「手料理が」
「ハア?」

テレビから視線をこちらに寄越した彼は、普段から恐れられているその強面をさらにしかめた。ソファに胡座をかいたその姿は、風呂上がりにジャージにTシャツと色気はない。

「お前の手料理が食べたいと言ったんだ」

ダメ押しにそう言うと、今度こそ彼は表情を崩した。苦虫を噛み潰したような、なんともいえない顔だった。その顔のままに、最近人気のバラエティー番組の流れるテレビを見ていた体を、ソファの背もたれに乗り掛かるようにしてこちらに向ける。スピーカーから流れる笑い声が、静寂をかき消していた。

「手料理。はあ」

彼はそれから呆れたように、困ったように口をへの字にまげた。

「なんでまた」
「……なんとなく、だ」

本当は会計の話を聞いて、だけれど。
しかしそんな曖昧な返事に彼は追求をしてこなかった。代わりに、首をひねってみせる。

「手料理なんて可愛らしい言葉を、天下の風紀委員長様が使うとは思わなかった」

先程から変な顔をするのは、そこが気になっていたからか。確かに、普段から彼になにか「お願い」することは少ない。あるとすれば、風紀委員長として不良な彼に「喧嘩をするな」とたしなめる程度だ。まして、今回は恋人としての「お願い」だ。自分のことであるがしかし、彼が困惑するのもうなづける。

「つまり、俺の飯が食いたいってことだろ」

だが、彼はそれも受け入れたように、ふっとその表情を緩めた。

「なんかそれ、プロポーズみたいで、イイ」

そしていつもみたく悪戯っぽい顔で笑むのだ。




会計の嫁の生徒会長はハイスペックで頭はいいし運動できるし料理はプロ並みだし性格は俺様じゃないので素晴らしい人間。
ただ優秀すぎてチャラい会計が本当に俺が彼氏でいいのか?とぐだぐだ悩んで浮気する話はスピンオフですねわかります
2016.11.20



君の手料理が食べたい。
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