いつも昼寝に利用していたベンチに、今日は珍しく先客が居た。近付けば、ふと目を覚ました彼がこちらを見る。相変わらず整った顔立ちをしていた。鋭い目付きに射ぬかれれば少し怖いけれど、それ以上に綺麗な顔立ちに頬が緩む。

「あんだよ」
「や、今日もいい顔してるね」

それが例え不機嫌そうに歪められても、怪我をして所々に痣や切り傷があっても、変わらない。
もしかすれば噂通りすぐ殴り付けられていたかもしれないが、彼がそんな動作をしようとする仕草は見られなかった。いまも目の前で欠伸をしているし。

「それ、気持ちいいの?」

だから今まで気になっていた疑問をふと訊ねてみた。なんとなくだったけれど、答えてくれそうな気がしたから。

「喧嘩?」
「そ。痛いのにわざわざするって事は、気持ちいいの?」

ぱちくり、と瞬きをし、片眉をひょいと上げられた。それから少し考えるように、視線が宙を舞い、ゆっくりと首をかしげる。

「さあ」

最後には投げやりな返事がやって来た。

「ふーん、そっか。気持ちいいわけじゃないのか」

なんだ。と肩を落とすと、逆に質問が返ってくる。

「気持ちよかったら、やんの?」
「そりゃ、やるね」

気持ちいいこと好きだし。ぼやけば、先刻の自分の返事と同じように、けれど興味のなさそうな声で「ふーん」と溢された。

「変なやつ」

ひどいなあと言おうとしたら、いつの間にか彼は寝入っていた。
お互い様だと思うけどなあ。
その横顔を見て、ちょっとため息をついた。

※※※
百合リバップル会計不良。2014,0108.




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