小学生(ショタ)×生徒会長
 

『ショタ(小学生)×会長』会長アンソロ様参加

鴻 氷雨(おおとり ひさめ)生徒会長
四門 昂矢(しもん こうや)小学6年生

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「鴻、てめぇ!」

豪奢な細工が施された正門に向かって足を速めていた俺の背後で、怒声が響き渡った。
そのまま無視して立ち去っても良かったのだけれど、今日だけは学園の前で問題を起こす訳にもいかない。渋々振り向いた俺の目には、予想通りの男が鬼のような形相で迫っていた。

「テメェ…よくも光を退学にしやがったな!」

勢いのままに飛んできた拳をかわし、そのまま掴んだ肩を地面へ叩きつける。
鈍い音がしたが、そんな事はどうでもいい。
落ちた肩に重心をかけながら学園一の不良を地べたにねじ伏せたままで、俺は狂犬の後に追従していた生徒会の面々に視線を向けた。

「――お前らも、俺に文句を言いに来たのか?」
「え…」
「いや…」
「だって氷雨!俺だけ退学なんて、おかしいだろうっ!こんなのイジメだ!」

後ろに控える取り巻きの数に勢いをつけたのか、散々学園内を掻き回してくれた問題児が、反省の色も無く唾を飛ばして叫んだ。

強い嫌悪感を隠しもせずに、狂犬を押さえ付けたままでひと睨みすれば―――さすが野生児、息を飲んで黙り込む。
動物には、どちらがより優位なのかを理解させればいいだけだ。後ろにひっついている役員共など、数の内にも入らない。


「最終決定は、お前の叔父……理事長が判を押して済んだ話だ。文句ならここまで周囲に迷惑をかけても止めなかった後ろの『お友達』に言えばどうだ?」

せせら笑うように答えを返せば、全員が顔色を青くする。


こんな馬鹿共に構っている暇は無いのだ。
急いでいる事を悟られないように、押さえつけていた肩からゆっくり手を離して、そっと踵を返す。


しかし――――遅かった。


「氷雨」

こんな場所では耳にする事のない、透き通るような高い声色。
第二次性徴に差しかかる前の、まだ幼いその声に…俺の鼓動が跳ね上がる。

「こ……」

思わずその名を口にしそうになって、慌てて開いた唇をきつく結んだ。

豪奢な正門の前に停まった黒塗りの高級車から姿を現したのは、高等学園には不似合いな、幼い少年だった。
少年の身を包む濃紺の制服は、この学園の姉妹校のものだ。
この面子の中で一番家柄の良い副会長に視線を向ければ、何かを思案するように目を細めているのがわかる。

俺は急いで『彼』の側まで近付き、その細い肩に手を乗せて車へ誘導した。


話しかけられても厄介なので、決して振り向かず、自身も素早く乗車した。静かに閉まる音と同時に、見慣れた正門が一気に遠のく。
何も言わず突然現れた小学生と姿を消した自分に、残された者達が何を思うかなど、もはやどうでもよかった。



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