定位置



夏野が俺の部屋で過ごす時の定位置は俺のベットの上だ。
ベットの上に座って、壁にもたれて雑誌を読んでいる事が多い。
夏野曰く「眠くなったらすぐ寝れるから楽なんだ。」だそうだ。
夏野よ、一応そこは俺のベットなのだがと思いながらも、夏野が寝てしまった時は、可愛らしい寝顔で眠る夏野を起こす事などできず、俺が客用布団で寝る事が多い。

さて、そんな夏野のお気に入りの場所が最近もう一つ増えたようだ。
それは俺の背中だ。
最近たまに、テレビの前に座る俺の後ろにやって来て、お互いの背中を合わせるようにして座ってくるのだ。
どうやら、かまって欲しい訳ではないけど、でも少し人恋しい時にそうやって背中合わせで座ってくるようだ。
背中に感じるお互いの体温がが気持ちいい。
その熱とわずかにかかる体重が、間違いなくお互いがそこにいると証明しているようで安心する。
声に出さずとも、お互いの気持ちが通い合うようなそんな気さえした。

今日もベッドの上で雑誌を読んでいた夏野が、もぞもぞと動き出したかと思ったら、俺の背中にピタリとくっつく様に自分の背中を預けてきた。

「夏野。」

「ん?」

「最近その場所もお気に入り?」

俺の問いかけに、夏野は雑誌を捲る手を止めて少し考えた後「んー、そうかも。」と答えた。俺も一言「そっか。」と答えると、夏野はまた雑誌を読みはじめ、俺もまたゲームに集中した。
別に深い意味は無くて、ただちょっと確認してみたかっただけだから。
しばらくそのままでいたら急に背中が重くなった。
首だけを後ろに向けて見てみれば、どうやら雑誌を読みながら眠ってしまったようだ。
不安定な体勢だからこのままだと夏野がバランスを崩して俺の背中から滑り落ちてしまうかもしれない。いくら畳でもずり落ちて頭を打ったら痛いし、夏野が怪我でもしたら大変だ。
徹は後ろに手を伸ばして、夏野が落ちないように支えると、ゆっくりと体をずらしながら振り向いて器用に夏野を受け止めた。
腕の中の夏野はぐっすり眠ったまま起きる気配がない。
よっぽど疲れているのだろうか?もしかしたらまた夜遅くまで勉強していたのかもしれない。
そんな夏野の様子に笑みを深くしながら、可愛い寝顔が見たくて夏野の前髪をかきあげた。
すぐにベットへ運んでもよかったのだが、何だかもう少しこのまま抱きしめていたくて、しばらくそのままずっと夏野の寝顔を見ていた。
長い睫毛に滑らかな肌。薄く色付いたピンク色の唇。
抱きしめた腕からは先ほどまで背中に感じていた温かい体温。

「夏野。そんなに俺の背中は居心地がよかった?」

安心してぐっすり眠ってしまうぐらいに。
眠る夏野に小さな声でささやけば、もぞもぞと動いて顔を俺の胸に擦り寄せてきた。
愛しい人が腕の中にいる幸せを感じながら、そっとおでこにキスをした。

これからもずっとこの温もりを感じている事ができますようにと祈りながら。






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背中あわせに座る徹ちゃんと夏野を書きたかっただけなんです。
もうちょっと書きこんで原稿用にしようかなと思ったんだけど……アップしちゃった。
あはは。






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