なに味?



学校帰りのバスの中。
徹ちゃんが何やら複雑な顔をして手もとの小さな箱を凝視している。
それは先ほど、バスに乗る前に夏野が薬局でもらったのど飴の試供品だった。
目薬を買ったら一緒にくれたので徹にあげたのだ。
そののど飴がどうかしたのだろうか?

「徹ちゃん、どうしたんだ?」
「ん?何が?」
「なんか難しい顔して箱を見てるから。」
「ああ、それは…。ほらここ。」

そう云って見せられた箱には“レギュラー味”と書かれていた。

「レギュラー味?」
「そう。レギュラー味。」
「……それってどんな味?」
「さあ?気になるだろ?」
「うん。」

確かに気になる。

「まあ、食べてみたらわかるか。」
そう云って徹は1つ取り出して口の中に放り込んだ。
 ・
 ・
 ・
「どんな味?」
「うーん…………レギュラー味?」
「………徹ちゃん、それ答えになって無いから。」
「いや、だってな、こう何て言うか〜その〜説明のしづらい味なんよ。」
「徹ちゃんの舌がおかしいだけじゃないのか?」
「…夏野、さらりとひどい事を言うな。」

徹はいかにも傷ついたというようにうなだれる。

「おいしいの?」
「ああ、うまいぞ。俺は結構この味好きかも。」
「好きだけどわからないんだ…。」
「うっ…。そんな冷たい目で見ないでくれ…。夏野も食べてみ、ほれ。」

そう言って徹は夏野の口の中にのど飴を放り込んだ。
 ・
 ・
 ・
徹が窺うようにように顔を覗き込んでたずねてくる。

「うまいか?」
「うん。」
「で、なに味だった?」

「……………レギュラー…味。」

悔しいけれどそれはとても説明しづらい味だった。

「ぷっ。」

ホントに悔しそうに答える夏野が可愛くて徹は思わずふきだした。

「自分だって答えられなかった癖に笑うな。」

夏野は顔を赤くしながら徹を睨む。

「かわいいな〜夏野は。うぐっ!」

夏野の拳が徹のわき腹に入る。

「なつの……痛い…。」

「かわいいとか言うな!」


後日のど飴を買って二人で食べてみたけど、やっぱり説明しづらい味だった。



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のど飴のレギュラー味、
私は結構好きです。
でも説明しづらい味です(笑)



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