とーるちゃん?!3



今、俺の目の前にどこかで見た事のある様な顔をしている子供が、夏野の腕の中で気持ちよさそうに寝ている。
何か、誰かに似ているように思うのだけど誰でしたっけ?
……………。
あー、そうだ。あれだ。
俺だよ。俺に似てる気がします。
うん。
似ているって言うか、子供の頃の俺に瓜二つな感じです。
あれ?
でも夏野は「とーるちゃん」って言ってたのに。
あれか?俺の聞き間違えで「徹ちゃん」だったのか?
そっか、じゃあ夏野の腕の中で寝てるのは俺か〜。
そっかそっかー。
……………。

「って、そんな訳あるかーー!」

「とっ徹ちゃん?!」

「夏野、これはいったいどう言う事だ?俺にそっくりな子供って、もしかして俺と夏野の子供なのか??そうなのか?!夏野が産んだのか?この間、夏野が嫌がったのに中に出してしまったからなのか?でも子供ってそんな早くできるっけ?」

「ちょっと、徹ちゃん落ち着いてって。」

「まさか高校生で子持ちになるとは思わなかったが、出来てしまったからにはちゃんと責任はとる。どの道夏野に将来言うつもりだったし、それがちょっと早くなっただけだと思えば。」

「あの、徹ちゃんてば。」

徹はとーるちゃんを抱えたままの夏野の左手を両手でガシッと掴んで瞳を合わせる。

「夏野、俺と結婚してくれ。」

はじめ何を言われているのか理解できない様子で、ぽかんとしたまま徹を見つめていた夏野の瞳が徐々に大きく開かれ、口をパクパクさせたかと思うとみるみるうちに顔が赤くなっていった。
そんな夏野の引き寄せて、夏野と子供を包み込むように優しく抱きしめた。

「夏野。俺さ、まだ高校生だしお前とその子をちゃんと養うなんてできないけど、来年卒業したら就職するつもりだし、卒業するまではアルバイトする。時間の許す限りその子の面倒も見るよ。だからさ、俺と一緒になろう。大好きだよ、夏野。」


**********

落ち着いてって言ったのに、予想通り徹ちゃんはとーるちゃんを見た途端パニックになってしまった。
まあ、急に自分そっくりの子供が目の前に現れたのだから無理も無い。
俺だってビックリして、正直今でもこの現実を信じきれずにいるのだから。
目の前の徹は普段ゲーム攻略にしか使われていない脳みそをフル回転させて、この現実を把握しようとしてるようだ。
さりげなくとんでも無い事も聞こえた様な気がするが、今は大目に見る事にしよう。
とりあえず落ち着くようにと声をかけるけど、徹のパニックは止まらない。
そして、そうこうしてるうちに徹から予期せぬ言葉が飛び出した。

「責任はとる。」

責任?なんの?

「どの道夏野に将来言うつもりだったし、それがちょっと早くなっただけだと思えば。」

何が?徹はいったい何の話をしているんだ?

「あの、徹ちゃんてば。」

いきなり左手を両手で握られて、ビックリして徹を見れば、今まで見た事が無いぐらい真剣な瞳とぶつかった。そんな徹の様子に息を飲む。
そして次に告げられた言葉に、今度は夏野がパニックになる事になる。

「夏野、俺と結婚してくれ。」

あまりの衝撃に、はじめ何を言われたのかわからなかった。
その言葉を理解する為に、脳内で徹の言葉を何度も再生する。
“俺と結婚してくれ。”
けっこん。ケッコン。結婚。
結婚ってなんだっけ?
男女が夫婦になる事だよな?
それで徹ちゃんが俺に向かって結婚してくれって言って……ええっ!!
やっとの事で事態を把握したけれど、何をどう言っていいのかわからず、パクパクと開いた口からは、ただ空気だけが吐き出される。そんな夏野と今だに眠ったままのとーるちゃんを、徹は包み込む様に優しく抱きしめてくれた。
徹の温もりと匂いにホッとして、次第に落ち着きを取り戻す。
そして夏野ととーるちゃんの事を思い、真剣に囁かれる言葉がとても嬉しかった。どんなに徹が自分の事を思っていてくれているのかが伝わってくる。
それがとても嬉しくて、泣きたくなった。
本当はこのまま「うん。」と頷いてしまいたかった。
でも……でも、違うんだよ徹ちゃん。

「徹ちゃん、違う。違うんだ。」

俺を抱いたままの徹ちゃんは、俺の様子に驚いたように見つめてくる。

「えっと、…俺と一緒はやっぱり嫌か?」

「そうじゃない、そうじゃないんだ。徹ちゃんの気持ちは嬉しいし、俺だって……俺だって徹ちゃんと一緒にいたいよ。でもね、違うんだ。」

「落ち着いて夏野。どうした?何が違うんだ?」

訳がわからず、少し困り顔の徹から体を離して、腕の中のとーるちゃんを抱えなおす。

「あのね、徹ちゃん。この子は徹ちゃんの子でも、俺の子でもないんだよ。」

「え?」

すっかり自分の子だと思い込んでいたらしい徹は、口を開けたままぽかんと夏野を見つめている。

「第一俺も男なんだから、子供なんて産めるわけ無いだろ?」

「へっ……あ、ああ。そうか。」

まだ完全には納得していない様だが、「それもそうか。」などといいながらとーるちゃんを見つめている。

「でも、じゃあこの子はいったい誰の子なんだ?どうして俺にそっくりでなんだ?」

「俺が持ってる、徹ちゃんにそっくりのタヌキのぬいぐるみの事は知ってるだろ?」

「ああ、とーるちゃんだろ?」

「うん。信じられないかもしれないけど、この子がそのとーるちゃんなんだ。」






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ごめんなさい。本当にごめんなさい。
こんなところで終わって。
続きは出来るだけはやく書くので。
もう少し待ってください。





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