笑顔と幸せ



「夏野〜。また眉間に皺寄せて難しい顔してどうしたんだ〜?」

そう言いながら、徹は夏野の眉間を人差し指でグイグイ揉んでくる。

「俺がどんな顔をしていようと徹ちゃんには関係無いだろ。離せ!」

ぺしっと徹の手を払いのけると、今度は両手で頬を包み込むように掴まれた。

「夏野よ、ほれ笑ってみ。スマイルだぞスマーイル。」

「俺はどこぞのファーストフード店員とは違うんだよ。離せって。」

どうにか徹の手を剥がそうとするのにビクともしない。普段ヘラヘラして弱そうなくせに見かけによらず結構力がある。なんかむかつく。
手を剥がすのを諦めて思いっきり睨みつけてみるけれど、徹は全然気にする様子も無くまだ「俺みたいに笑ってみ。」などと言っている。いったい何だと言うのだ。

「何で俺がヘラヘラ笑わなきゃいけないんだよ。」

「何でって、しかめっ面してるより笑ってる方が楽しいだろ?楽しい方が得した気分じゃないか。笑う門には福来るって言うしな〜。夏野にはいっぱい幸せになって欲しいだろ。」

そんな事を言われたらどう反応していいのか分からなくなる。
本当は顔を逸らしてしまいたいのに、いまだに頬をしっかり両手でホールドされているのでそれもかなわない。

「…バカじゃないの。」

仕方がないので、視線だけそらせて小さな声で悪態をつく。
そんな夏野の態度にも徹はニコニコ笑っている。
いつも笑顔の徹ちゃん。
笑う門には福来るなら徹ちゃんはいっぱい幸せなのかな。

「じゃあ、徹ちゃんはいつも笑ってるからいっぱい幸せなのか?」

「ん?俺か?幸せだよ。でも、夏野が俺の隣で笑っていてくれたらもっと幸せだな〜。」

「何で?」

「だって、好きな人が笑ってると幸せだろ?」

相変わらず照れもせず恥ずかしい事をサラッと言ってのける徹。
聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくる。
でも、徹の言っている事も確かに理解できる。
だって、徹の笑顔を見ているのは好きだから。
徹が笑うと心の中がほんわりと温かくなる。
俺が笑うと徹ちゃんもこんな気持ちになってくれるのかな?
そうだったらいいな。

「徹ちゃん。」

夏野も徹と同じように両手を徹の頬に添えた。

「ほえ?」

「俺もね、徹ちゃんが笑ってると幸せだよ。」

「夏野。」

夏野からも自然と笑みがこぼれて、それを見た徹はより一層笑みを深くした。

「うん。やっぱり夏野の笑顔、好きだな。」

心の中がほんわりと温かくなる。
少しくすぐったい様な不思議な気分。
出来ればその笑顔が向けられるのが自分だけならいいと思うのはちょっと我儘かな。

ほら、ねえ、笑って。

君の笑顔から幸せが溢れるよ。




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徹ちゃんと夏野にはいつも笑顔でいてほしいなと思います。

そしてこれを読んで下さったあなたも笑顔だといいなと祈りつつ。






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