王子のキスと眠り姫 カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて目が覚めた。 ゆっくりと瞼を開くと、今だ深い眠りについていて健やかな寝息をたてている徹の顔が眼に映る。 『ああ、そうか。昨日は徹ちゃんの家に泊ったんだっけ。』 何だかとても甘えたくなって、隣で眠る徹の体にすり寄る様に顔を埋めた。 温かい。 顔を上げて小さな声でそっと名前を呼んでみたけど、徹はいまだに夢の中。 そんな徹が愛しくて、夏野は徹の唇に軽く優しいキスをした。 「ん…、ん。なつの?」 「おはよう、徹ちゃん。」 「おはよう。…今俺にキスしたか?」 「うん、したよ。眠り姫を起こすのは王子様のキスって決まっているだろ?」 「眠り姫?………もしかして俺の事か?」 少し不服そうに尋ねてくる徹が可愛らしくて「そうだよ。」と答えながらもう一度唇に触れるだけのキスをした。 「んー、お姫様か……。まあ夏野にキスしてもらえるのならお姫様でもいいか。」 そう言って徹は体を起こすと夏野の上に覆いかぶさってきた。 「お姫様としては、やっぱり起こしてもらった御礼をしないとな。」 徹の手が夏野の体の上をもぞもぞと動き出す。 「ちょっと!朝から何する気だよ。」 「ん?だからお礼を。」 「王子様を襲うお姫様とか聞いた事ないし。」 「そんな積極的なお姫様も素敵だろ?」 「どこが、うぐっ」 まだ言い募ろうとする俺の唇を徹の唇が塞いだ。 まったく、うちの眠り姫にも困ったものだ。 でも、そんな徹が大好きな自分にも困ったものだ。 「仕方無い、お姫様の申し出を断る事はできないからね。」 「ありがたき幸せですわ♪」 「徹ちゃん気持ち悪い。」 布団の中にクスクスと笑う二人の声が重なり合う。 こうやってじゃれ合う何気ない時間が大好きだ。 これを幸せって呼ぶんだよ。 -------------------- 皆が幸せなのがいいと思います。 皆に幸せが届きますように。 |