とーるちゃん?!1



朝のまどろみの中、今日は土曜日で学校は休みだからもう少し眠ろうと、夏野はぼんやりとした意識の中で思った。
休日の朝、布団の中で過ごすゆったりとした時間が夏野は結構好きだった。
暖かい布団に包まれて、ふかふかとしたタヌキのぬいぐるみの“とーるちゃん”を抱いているととても気持ち良くって幸せな気分になる。

そう、腕の中のふかふかとしたとーるちゃん。
ふかふかと……………あれ?
とーるちゃんの手触りがなんだかいつもと違うような気がする。
そしてちょっと生温かいと言うか何と言うか………??
あれ?

夏野は重い瞼をゆっくりと開いて腕の中のとーるちゃんを見た。
薄茶色のふかふかの毛の中に茶色いタヌキの耳がちょこんとついている。

あれ?とーるちゃんの毛ってこんな風だったっけ?もう少し短かったような。

不思議に思いながらも確認する為にそっと腕を解いて布団を捲った。そしてそこに現れたとーるちゃんの姿に夏野の思考は停止し固まった。

そこにはタヌキの尻尾と耳を生やした徹ちゃんにそっくりの裸の子供が寝ていたのだ。

とーるちゃんじゃ無くて徹ちゃん?!いや、徹ちゃんはこんなに小さくない。
何故自分のベットの中に子供が寝てるんだ?何処から来たんだ?と言うか、大きさはとーるちゃんと同じぐらいで30センチほどだから子供と言うよりむしろ赤ん坊??
でも赤ん坊に何故タヌキの尻尾と耳が生えてるんだ???
それより徹ちゃんにそっくりの子供って?もしかして俺が産んだのか?!
だから中はダメだって言ったのにって、いやいやいや、そんなはずはない!
じゃあ徹ちゃんの隠し子?!
考えれば考えるほど分からなくなって、頭の中が真っ白になりそうになったその時だった。
「ぷしゅっ!」と言う音が聞こえたかと思ったら子供がプルプル震えていた。
夏野は慌てて布団を子供にかけてやる。
ドキドキしたまましばらく子供を見守るが、どうやら大丈夫そうだ。
自然に口からほっと溜息が洩れた。
ベットに座り込んだまま壁に背中を預け、気持ちを落ち着かせるために目を閉じてゆっくりと深呼吸をする。
2〜3回繰り返した後、目を開いてベットを見る。
やっぱり夢じゃない。子供らしきものが俺のベットで寝ている………。

もう一度深呼吸してから子供の顔をじっくり見てみる。
やっぱり徹ちゃんにそっくりだ。
すると突然子供の目がぱっちりと開いた。
見つめ合う事数秒。
はじめ驚きで大きく見開かれた瞳は、数度瞬きを繰り返すと笑顔へとかわった。すると子供は布団を跳ねのけて起き上がり夏野のお腹に抱きついてきた。

「わわっ!」

「ほえ〜。」

子供は夏野のお腹にぐりぐりと顔を擦り寄せた後、夏野を見上げてニコッと笑い尻尾をひょこひょこ振っている。
ヤバイ、なんかすっごく可愛い。

頭の上についているタヌキの耳らしき物を、そっと指先で触ってみるとピクピク動いたのでどうやら本物らしい。
先ほどからひょこひょこ振られている尻尾も本物の様だ。
いったいこれはどう言う事なのだろう?

とりあえず子供が風邪を引かないようにと布団でくるんでやる。

「お前はいったい何者なんだ?」

「ほえ?」

子供は夏野の問いかけにきょとんとした顔で首を傾げている。その様子もとても可愛らしくて、自然と笑みがこぼれた。

「もしかしてその『ほえ』って言うのはお前の鳴き声?」

「ほえ〜♪」

夏野の言っている事がわかるのか、子供は嬉しそうにコクコクと頷いている。

それにしても昨日は確かにぬいぐるみのとーるちゃんを抱いて寝たはずなのに、いつの間にこの子にすり替わってしまったのだろう?
朝になったらタヌキの耳と尻尾を生やした徹ちゃんそっくりの子供になっていたなんて。
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タヌキの耳と尻尾?!

でもまさか………。
そんなおとぎ話の様な事が…。

夏野は自分に抱きついている子供を覗き込むと、恐る恐る問いかけた。

「……もしかして。とーるちゃん?」

「ほえ〜♪」

子供は満面の笑みで頷いた。


どうやらおとぎ話のような事が本当におこったようです。




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以前チャットでとーるちゃんを擬人化の話が出まして、いつか書きたいと思っていました。
途中までは書いていたので、ちまちまっと書き足してアップさせて頂きました。
とーるちゃんは「ほえほえ。」鳴きます。
これから言葉も少しずつ覚えていく予定です。
この後は徹ちゃんとご対面です。
徹ちゃんと夏野ととーるちゃんのほのぼの楽しい話を書いていきたいです。



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