膝枕



先程から夏野が俺の膝を撫でながら何か難しい顔をしている。いったいどうしたのだろう?

「夏野?俺の膝がどうかしたのか?」

「ねえ、徹ちゃん。膝枕って気持ちいいの?」

「………は?」

思わずマヌケな声を出してきょとんとしてしまった。

「膝枕?」

「うん。俺、膝枕なんてしてもらった事ないからさ。徹ちゃんの膝に寝てみてもいい?」

「あ、ああ。いいぞ。」

俺がOKすると、夏野は俺の膝の上にこてんと頭を置いて寝転んだ。
しばらく寝心地を確かめるように、上を向いたり横を向いたりしていた。

「それで膝枕の感想は?」

「……ゴツゴツする。」

「ぷッ。ははは、そりゃ仕方ないな。男の俺の膝だし。」

「ゴツゴツするけど、嫌いじゃないかも。」

夏野はうつぶせになると徹の腰に腕をまわしてギュッと抱きついてきた。

「夏野?」

「徹ちゃんを占領してるって気分になれるだろ?」

夏野の可愛い不意打ちに、顔が赤くなるのが自分でわかった。

「俺の中はいっつも夏野でいっぱいだよ。」

照れくさいのを誤魔化す様に夏野の頭を撫でてやると、腰にまわされていた腕がはずされ、今度は仰向けに寝転がった夏野と目が合う。

「もっといっぱいになればいいと思うよ。」

そう言って笑った顔がとても綺麗で、夏野にはかなわないなって思った。
しばらく頭を撫でていると、瞼が閉じられて小さな寝息が聞こえ始めた。
起こさないようにそっとベットに手を伸ばして布団を引っ張ると、夏野の上にかけてやる。

最近夏野が以前よりも俺に甘えてくれるようになった。
それはもしかすると俺の高校卒業が近いせいかもしれない。
普段そんな素振りは見せないけれど、夏野は夏野で俺が卒業してしまうのを寂しく思ってくれているのかもしれない。

卒業式まであと少し。そして4月からは溝辺町の会社に就職が決まっている。
社会人と学生では生活リズムも違うし、今までよりも夏野と一緒に過ごせる時間は減ってしまうだろう。でも、何があろうと俺は夏野を離さないよ。

「これからもずっと夏野と一緒にいる為に、俺頑張るからな。」

起こさないように小さな声で囁かれたその言葉は、寝ている夏野には聞こえていないはずなのに、寝ている顔が少し微笑んだように見えた。

夏野が起きたら、今度は俺が夏野に膝枕をしてもらおう。
そんな事を考えながら、徹もいつの間にか眠りの中へと落ちていった。






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3月になったら卒業式ネタを書きたいなと思って。
そして本当は徹ちゃんが夏野の膝枕で寝る話を書こうと思ったのに、いつの間にか夏野が徹ちゃんの膝で寝てました(笑)
おかしいな…。








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