腹が減った……。

今日は5・6時限目が体育でしかも持久走だった。
女子は5キロなのに男子は10キロっていったい何の嫌がらせだろう…。
授業が終わった頃にはもうヘトヘトで早々に帰ろうとしたところを運悪く担任につかまり教材運びを手伝わされてしまった。
そんなこんなで昼に食べた弁当分のエネルギーなどとっくの昔に使い果たし、徹はただ今空腹と格闘中だった。
バス停のベンチに座りながら腕の時計に目をやる。
次のバスまでまだ30分もある。

「あー、今なら空腹で死ねるかも……。」


「誰が死ねるって?」

声のした方を見てみると夏野が立っていた。

「おー、夏野も今帰りか〜。」

「ああ、ちょっと図書室によってたから。あと、名前で呼ぶなって。」

夏野はそう言いながら徹の頭を軽く叩いて隣に座る。


隣に座った夏野からなんだか甘い香りがふわりと漂う。

「夏野から甘い匂いがする。うまそう……。」

「うまそうって…、人を食い物みたいに言うな。飴食べてるからだろ、ほら。」

心底呆れたような顔をしながら夏野が口をあけて見せる。
舌の上には赤い飴玉が一つのっていた。
飴の甘い匂いが空腹の腹を刺激する。
飴では腹の足しにはならないけどこの際食べのもだったら何でもいい。

「夏野!頼む俺にも飴を一つくれ!」

必死の形相でお願いしてくる徹にビックリしながらも夏野は少し申し訳なさそうに答えた。

「ごめん、今食べてるこれが最後なんだ。」

「………。」

神様って残酷だ…。
情けない顔でガックリと肩を落とす徹から、これまた情けない腹の音が盛大に響きわたる。

「…徹ちゃんお腹減ってるの?」

徹はもう情けないやら恥ずかしいやらで無言でうなずく。


「仕方がないなー。」

はーっとため息が聞こえてきたかと思うとそっと顎に手を添えられて上を向かされる。
ビックリする間もなく徹の唇に夏野の唇が重ねられる。
重なった唇の隙間からスルリと甘い塊が徹の口に入ってきた。
チュッと小さな音をたてて離れていく唇を呆然と見送る。


「こんな所で餓死されたら困るからな。」

そう言って悪戯っぽく笑った夏野が立ち上がるとバスが走ってくるのが見えた。

「ほら徹ちゃんバス来たぜ。」

「あっ…ああ。」


口の中には赤くて甘い飴。
きっと今自分の顔はこの飴みたいに赤いに違いない。




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餌付けされる徹ちゃん(笑)
て言うか、あれ?
なんか書き終わってみると夏徹っぽい…。
いえいえ、あくまでも徹夏なんで。

この二人はずっとラブラブでいて頂きたい。






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