お正月



1月1日元旦。
今日は夏野と一緒に初詣に行くはずだった。
本当は年明け前に家を出て、夜中に初詣に行くはずだったのだが、まあ色々あって結局行けず。仕切りなおして昼前に行こうと言う事になったのだが………。
徹を迎えに来た夏野さんが、何故か武藤家の居間で酔ってらっしゃいます……。

徹が自分の部屋に出かける用意をしに行ったほんの5分ほどの間に一体何があったのか。
居間で待っている夏野を迎えに行くと、夏野は顔をほんのり赤くして完全に酒に酔っていた。
夏野の横で陽気に酒を飲む父親とは反対に、困り顔で二人を見つめる保に問いただす。

「保よ、これは一体どういう事だ?」

「ああ、兄貴。父さんがさ、正月だからって夏野に酒を飲ませちゃってさ…。まさか夏野がこんなに酒に弱いとは思わなかった。」

「飲ませたってどれぐらい?」

「このお猪口に1杯だけ……。」

そう言って保が小さなお猪口を徹に見せる。

「お猪口に1杯だけ?!………嘘だろ。」

小さなお猪口に1杯だけで酔えるものなのか?弱いにも程があるだろ…。
徹はとりあえず顔を赤くして葵に向かって延々と数学の公式を語り続けている夏野に話しかけた。

「夏野、数学はもういいからとりあえず俺の部屋で休むぞ。」

「んー。徹ちゃん?」

夏野は徹の方に振り向くと徹の顔を確かめる様にぺたぺたと触りはじめた。最後には両方の頬っぺたを引っ張って笑いだした。

「あははははは、徹ちゃん変な顔〜。」

「……この酔っ払いめ。ほら夏野行くぞ。」

徹が夏野を立たそうと腕を掴むと思いっきり振り払われた。

「やだ。俺小父さんに大事な話があるんだから!」

何を言ってもききそうに無い夏野の様子にため息をつくと、徹は仕方なく夏野の横に座った。

「で、父さんに話って?」

夏野は父さんの方に向くと、真面目な顔で話し掛ける。

「小父さん。」

「なんだい夏野君。」

お酒を飲んでご機嫌の父さんはにこにこしながら夏野に向き直る。父さんも結構酔っているようだ。

「小父さん、徹ちゃんを俺のお嫁さんに下さい!」

夏野はそう言って両手を床について頭をさげた。

「なっ夏野!?」

「ぶーっ!」

徹がビックリして立ち上がった横で保が飲んでいたお茶を吹き出す。

「夏野ちょっと待て!俺が嫁なのか?夏野が嫁で俺が婿だろ?!」

「そうだな〜、徹は長男だからな〜。」

「二人ともつっこむとこそこ?そこなのか?!」

徹が必死で夏野に訴える横で保がまともにつっこむ。

「なんだよ徹ちゃん、俺の事好きじゃないのかよ。」

「大好きだけど、できれば俺が婿の方がうれしいのだが。」

「だって、徹ちゃんのウエディングドレス姿可愛いと思うんだ俺。」

拳を握って力説する夏野に徹も必死で訴える。

「俺なんかより絶対に夏野の方が可愛いよ!だから。」

「そうね、ナツがお嫁さんの方が絶対かわいいわよね。」

「母さんも夏野君がお嫁さんに来てくれた方が嬉しいわ。」

テレビを見ながらみかんを食べる葵といつの間にか居間に戻ってきた母さんが徹に同意してくれる。ありがとう二人とも。

「みんな論点そこ?!そこなの?!」

「保うるさい。」

「そうよ〜。愛し合ってるならいいじゃない。それに夏野君かわいいから。」

一人必死につっこむ保は誰の同意も得られずあえなく撃沈。あきらめておとなしくみかんに手を伸ばす。後は好きにして下さい。

「……別にかわいくなんかないもん。」

夏野が唇を尖らせて拗ねながら言う。
夏野よ、お前がかわいく無い訳ないだろう。どうして分からない?その拗ねた姿も殺人的にかわいいぞ!家族がいなければ俺は間違いなく押し倒しているぞ!
徹は夏野の両手をガッシリと掴むと瞳をあわせる。

「夏野、お前が結婚の事まで考えてくれてたなんて俺嬉しいよ。嫁にはなれないけど、夏野が嫁で俺が婿じゃだめか?俺、必ずお前の事幸せにするから。だから俺と結婚してくれ。」

「徹ちゃん……。うん、分かった。徹ちゃんのドレス姿が見れないのは残念だけど。俺徹ちゃんのお嫁さんになるよ。」

「夏野!」

「徹ちゃん!」

二人は互いに強く抱きしめ合うと、周りから祝福の拍手があがった。
保だけは何かあきらめた様な笑顔だったが気にしない。

その後徹の部屋で仮眠を取った夏野が2時間後に目覚めたとき、何も覚えていなかったと言うお約束の結末に徹は一人涙した。
やっと出かけた初詣では、お賽銭に千円を入れ必死に祈っていたとか。
何はともあれ、夏野は覚えていなくても武藤家の家族公認になったのは大きな一歩と言えよう。
頑張れ徹!
お前の未来は明るいぞ!




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今年初めてのお話がこれですみません。
未成年はお酒飲んじゃダメですよ〜。
お酒は二十歳になってからです♪







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