マフラー



「おそろいのマフラーとかなんかよくね?」

学校帰りのバスの中、徹と夏野は一番後ろの席に2人で座っていた。
何となく窓から外を見ていた夏野に徹からかけられた言葉が先ほどのそれである。

「誰と誰が?」

「だから、俺と夏野が。」

徹はニコニコしながら徹と夏野を指差した。
いったいこの男は急に何を言い出すのかと思えば。

「やだよそんなの。恥ずかしいだろ。」

夏野がそっけなく答えると、徹は唇を尖らせて抗議してくる。

「そっか〜?いいと思うんだけどな〜。なんか恋人って感じで。」

その言葉に夏野は頭を抱えたくなった。

「ばらしてどうするんだよ、ばらして。俺らが付き合ってるのは秘密だろ?!」

夏野がそう言うと、徹は「あっ、そうか。」などと言っている。全くこの能天気男は…。まあ、そんなところも好きだったりするのだけど、たまにドッと疲れる。
徹はそれでもまだ諦められないらしく「でも、兄弟でおそろいとかもあるしな〜。そういうのでもダメかな?」などと一人ブツブツ呟いている。
全く仕方ないな。

「徹ちゃん、今巻いてるマフラーはずして。」

「ほえ?これか?」

「そう、ほら早く。」

徹は夏野に言われるままに自分が巻いているマフラーをはずした。
すると今度は夏野が自分のマフラーをはずして、徹の首に巻いてやる。

「夏野?」

徹は訳がわからず、キョトンとした表情で夏野を見つめている。

「俺のマフラー徹ちゃんにあげる。だから徹ちゃんのマフラー俺にちょうだい。おそろいよりもこっちの方が、なんか良くない?」

夏野の言葉に徹の表情がパーっと明るくなる。

「なっ夏野〜。」

うれしさのあまり抱きついてこようとする徹を寸前で止める。

「バカ、場所を考えろ!場所を。」

「だって、嬉しいんだ。仕方ないだろ〜。」

「はいはい。んで、徹ちゃんはマフラーくれないの?」

「もちろんやるに決まってるだろ。」

そして徹は手に持っていたマフラーを夏野の首にグルグル巻き始めた。

「ちょっと、そんなにグルグル巻いたら苦しいって。」

「あっ!ごめん。」

今度は慌ててマフラーを緩める徹の姿を見て思わず笑みがこぼれる。
こんな何気ないやり取りがとても幸せで愛しいと思う。

「よし。夏野似合ってるぞ。」

「徹ちゃんも似合ってるよ。」

徹ちゃんに巻いてもらったマフラーはいつも自分が巻いていたマフラーよりも暖かく感じた。




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おそろいもいいけど、とりかえっこもなんか萌えるなって。





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