聞いてる? 夏野はただ今大変暇をもてあましていた。 さっきまで徹のベットで雑誌を読んでいたのだが、その雑誌もすでに読み終えてしまった。他の雑誌も昨日来たときに読んでしまったし、することが無い。 徹はと言えば、いつも通りゲームをしている。何でもラスボス攻略中で忙しいらしく、先ほど声をかけてみたけれどほとんど上の空でこちらを振り向こうともしない。 なんとも面白くない。 「徹ちゃん、もう他の雑誌ないの?」 「ん?んー。」 「お腹すいたね。」 「んー。」 「明日晴れるかな?」 「んー。」 「聞いてる?」 「んー。」 「…………。」 何を聞いてもさっきからこの調子だ。 腹が立つ。 「今日の晩御飯は牛の丸焼きだって。」 「んー。」 「明日は隕石が降るらしいよ。」 「んー。」 「俺帰っちゃうよ?」 「んー。」 「えっちしようか?」 「んー。……………ん?えぇぇぇ!!!!」 それまでゲームに夢中だった徹が勢いよく振り返った。 「ななななな夏野?!」 だが、徹が振り向いた時にはすでに夏野は部屋を出て行くところだった。 「じゃあ徹ちゃん。ゲームと仲良くね。」 夏野はそう言い残すと、さっさと階段を下りて行ってしまった。 「っちょ、ちょっと夏野待って、うわぁ!」 徹は慌てて夏野を追いかけようとしたけれど、ゲーム機につまづいてこけてしまう。 夏野が玄関で靴を履いていると、2階から徹が自分を呼ぶ声の後にドスンという大きな音と「ああああ!データがー!!」と叫ぶ声が聞こえた。 どうやら倒れた拍子にゲームのデータが消えてしまったようだ。いい気味だ。 ゲームに夢中で人の話をちゃんと聞かなかった報いだよ。 「バーカ。」 その後、徹は3日ほど夏野に口をきいてもらえなかったのだった。 ----------- ゲームなんかよりもっと俺をかまってよ! って感じかな? |