とーるちゃん2



「最近泊まっていかないよな?どうしてだ?」


夏野は今日も徹の家に遊びに来ていた。
そして、そろそろ夜も遅くなってきたので、帰ろうとしたところに徹から問いかけられた。
そう言えば最近徹の家に泊まっていない。
最近と言うか“とーるちゃん”を抱いて寝るようになってからだ。

「別に、ただ最近は家でもよく寝られるようになったから。それだけだよ。」

「ふーん。何で?」

「何でって?」

「何で最近急によく眠れるようになったのかと思って。」

「別に理由は無いけど……。」

まさか“とーるちゃん”を抱いて寝てるからとは言えない。

「そっか、じゃあ今日は久しぶりに泊まっていけよ。な?」

……うれしい。
徹ちゃんにそんな事言われたら帰れるわけ無いよ。

「うん。別にいいけど。」

でも素直じゃない夏野はぶっきらぼうに答える。
そんな訳で久々に徹の家にお泊りする事になった。
それはいい。
それはいいのだが……

―午前1時―

寝られない……。
以前ならアッと言う間に眠れたのに、今日はどうした事か全然眠れない。
徹の家で眠れないなんてはじめてだった。
多分原因のひとつは寝なれてない客用布団のせい。
今までは徹のベットを占領していたが、今日は客用布団で寝ることになったのだ。
そしてもうひとつの原因は……“とーるちゃん”。
先ほどから胸の辺りが妙に寂しい。
いつも抱いているタヌキのぬいぐるみのとーるちゃんがいないからだ。
最近寝るときは毎日とーるちゃんを抱いていた。
それが今日は無い。
当たり前だ、急に徹の家に泊まる事になったし、何よりとーるちゃんを持ってくる訳にもいかない。
俺がとーるちゃんを抱いて寝ているなんて誰にも知られる訳にはいかない。

試しに枕を抱いてみたけれど、やっぱり駄目だった。
あのモフモフ感ととぼけた愛くるしい顔が無ければ!!
だから枕では駄目なんだ!
唯一この部屋の中でとーるちゃんの変わりになるものと言えばそれは……。

徹ちゃん。

でもまさか徹ちゃんを抱いて寝る訳にはいかない…よな。
出来れば抱きしめたいけれど……って何考えてんだ俺は!

せめて徹ちゃんのベットでならぐっすり眠れただろうに、まさか今更かわれとも言えない。
ベットでは徹が気持ちよさそうに寝ている。
そんな徹ちゃんを起こすわけにもいけないし…。
って言うか、俺って知らない間にとーるちゃん無しでは眠れない体になってしまったのか?
それってちょっとどうなんだ!!

ひとしきり悩んだ後、仕方が無いので客用布団にもぐりこんでみるけれど、やっぱり眠れそうには無かった。



―午前7時―

「ふわぁ〜〜。よく寝た………ん?」

徹が目を覚まして起き上がると、すでに夏野が起きていた。
珍しい。だいたいいつも徹の方が先に起きて夏野を起こす事が多いのに。

「おはよう夏野。珍しいな、お前の方が先に起きてるなんて。」

「……おはよう。」

夏野の様子がおかしい、なんだか元気が無いと言うか疲れているような……。

「どうかしたのか?」

「…なんか全然眠れなくて。」

「全然って……もしかして一睡もしてないのか?」

徹がそう問いかけると、夏野は黙って首を縦に振った。

「何で…なんかあったのか?」

「ううん、多分客用布団に慣れてないせいだと思う。ごめん気にしないで。じゃあ、俺そろそろ帰るよ、学校に行く準備しなくちゃ。」

そう言うと夏野はさっさと部屋を出て行ってしまった。

「えっ!おいっ、ちょっと夏野?!」

徹は慌てて止めたがその時にはもう夏野は階段を降りてしまった後だった。



寝不足で辛そうだった夏野の事が心配だったが、結局その日は朝のバスでも一緒になることは無く、学校でも体育の授業や移動教室などでバタバタしてしまい夏野に会いに行く事が出来なかった。
仕方が無いので徹は家に帰ってすぐ夏野の家に行くことにしたのだった。

夏野の家に着いたらまだ夏野は帰っておらず、母の梓が迎えてくれた。
夏野が帰ってくるまで部屋で待っていてと言われたので遠慮なく上がらせてもらうことにした。
そう言えば夏野の家に来るのなんて久しぶりだ。いつもは夏野が徹の家に遊びに来るから、徹が夏野の家に行くことなんてめったに無い。
夏野の部屋の扉を開くと相変わらずお洒落な空間が広がっていた。同じ男子高校生の部屋とは思えない。特にあの天蓋付きのベット。テレビなどで見たことはあったが、はじめて夏野の部屋に来たとき、本当にこんなベットあるのだと感動したのを覚えている。

「んっ?」

徹がそんな事を思い出しながら部屋を見回していると、夏野のベットにこの部屋には妙に不釣合いなものを発見した。

ぬいぐるみだ。

徹が不思議に思いながらベットに近寄ってそのぬいぐるみを手にとってみると、それはどうやらタヌキのぬいぐるみらしい。
どうしてこの部屋にぬいぐるみがあるのだろう?
夏野の物だろうか?でもあの夏野とぬいぐるみ……どう考えても結びつかない。
だが、この部屋にあるという事はやっぱり夏野の物なのだろうか?
ベットに腰をおろしてぬいぐるみを手に考える。

「う〜ん、ミステリー………。」






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夏野衝撃の事実。
とーるちゃん無しでは寝られない体に(笑)
そしてタヌキがタヌ…じゃなくて、徹ちゃんがとーるちゃんに出会うです。
まだ続きます〜。




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