11月11日




「最近寒いなー」なんていいながらも、今日も屋上で相棒と一緒に弁当を食べる。
寒いのなら教室で食べれば良いわけなのだけど、それをしないのは二人だけの時間を大切にしたいからだ。
教室だと人も多いから邪魔も入りやすい。
特に相棒は人脈も広い上に非常にもてるからなおさらだ。
屋上にもまったく人が来ないと言うわけでは無いが、比較的人も少ないし、寒くなり始めたこの季節ではなお更屋上に来る物好きも少なくなり、今日などは陽介と悠の貸切となっていた。

「あーいぼ。食後のデザートにポッキーなんていかがですか?」

「へー、珍しいな。陽介がお菓子持ってくるなんて。」

「何でも今日はポッキーの日らしいから。」

「ポッキーの日?」

「何だそれ?」と首を傾げる相棒に、ポッキーの日について軽く説明すると「なるほど。」なんて関心したように頷いていた。
別にそんなたいした事でもないのに、そんな反応を見せる相棒が可愛いななんて思いながら持ってきたポッキーの封を開けた。

「ほい。どうぞ召し上がれ。」

箱ごと悠の方へポッキーを差し出したら、何故か悠は伸ばしかけた手を引っ込めてしまった。

「?どした?くわねーのか?」

「食べるよ。」

じゃあ何故?と続けようとしたら、悠は「食べさせて。」と言って口をパカリと開けた。

「なんだ?今日はえらく甘えん坊だな。」

「いいだろたまには?」

そう言って笑う彼の口元に、箱から取り出したポッキーを一本差し出したら、パクリとその先にかじり付いた。
そのままポリポリポリと小気味よい音を立てながら食べ進められ、手に持ったポッキーが少しずつ短くなって行く。
何だかその様子が、小動物がえさを食べているときの様に見えて可愛い。
チョコレートでコーティングされている部分を全部食べ終わったのを見て、手を離そうとしたら、離す前にポッキーの残りの部分ごとパクリと指も食われてしまった。

「…あの、俺の手は食いもんじゃねーんだけど…。」

悠はそんな陽介の言葉を気にした風も無く、陽介の指に舌を絡ませてポッキーを奪っていく。
その舌の感触に、陽介の背筋をぞわりと甘い感覚が駆けぬけた。
あー、これはちょっとやばいかも。なんて考えていたら、悠は陽介の指を丹念に舐めた後ちゅっと音をたてて唇を離し「ご馳走さま。」と言ってにこりと笑った。

「えーっと……ポッキーゲームとかしてみない?」

これはもしかして誘われてるのかなと、そんな提案をしてみたら……

「うーん。別にかまわないけど、ゲームだけですむのか?」

って聞かれたから。

「あー……無理…かな。」

って答えたら。

「じゃあダメだな。次の数学はサボれないだろ?」

とバッサリ切られた………。「じゃあさっきのアレはなんだったんだ!」と心の中で叫ぶ俺を置いて相棒が立ち上がる。

「ほら、さっさとしないとそろそろ予鈴が鳴るぞ。」

「へいへい。わーったよ。」

返す声が少し不貞腐れたものになってしまってもこの場合仕方ないだろう。

「拗ねるなよ。」

「拗ねてねーよ。」

「陽介、放課後暇?」

「ん?ああ、今日はバイトもねーけど?」

「じゃあ、うちにおいでよ。奈々子も遊びに行くって言ってたし、誰もいないからポッキーゲームしよ。」

「………え?」

悠の言葉に頭が真っ白になる。
それってもしかして………。

「ほーら、はやくしないと置いてくぞ!」

固まる陽介を置いて、悠は既に校舎へ入る扉の前に立っていた。

「ちょっ、待てよ!」

陽介は慌てて立ち上がると、彼の元へと駆け出した。


 『可愛い恋人に振り回されるのも、たまにはいいもんだぜ?』




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陽介が手に持ったポッキーを
ポリポリ食べる番長を書きたかっただけなんだ。




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