はなぷちのペーパー用SS



6月22日金曜日。
今日は俺の18歳の誕生日だ。
そう言えば、去年は相棒と完二と三人で、りせのところに事件の捜査として豆腐を買いに行ったっけ。
りせちーに豆腐を貰って、豆腐は嫌いだけどりせちーに貰ったって事で浮かれながら3人で帰ってたら、今日が自分の誕生日だって事を思い出してさ。
「あ、今日俺の誕生日だ。」って言ったら「そう言う大事な事はもっと早く言え。」って相棒に怒られた。
プレゼントも何も用意できないってブツブツ言ってる相棒に、「ガキじゃねーんだから、そんなの別にいいって。」って言ったらもっと怒られた。
「大切な人の誕生日は祝いたいんだって。」言って。
そんな事言われたのは初めてだったから、スゲー照れくさくて、真っ赤になってしまったのを覚えている。
結局その日は相棒と完二に「誕生日おめでとう。」と言われて別れた。
その後、すぐにりせがテレビに落とされてバタバタと慌ただしくなり。そんな事もすっかり忘れてしまっていたのだけど、りせを救出した数日後。
「遅くなってしまったけど。」と言って相棒が誕生日プレゼントをくれた。
驚いて受け取った箱の中には、ストラップが入っていて「そのストラップ、俺とおそろいなんだ。」と自分の携帯についているストラップを見せられた時、相棒のあまりの可愛さに、鼻血が出るかと思った。
この時はまだ付き合ってはいなかったのだが、既に俺は敦貴に恋心を抱いていたので、飛び上るほど嬉しかった。

そんな去年の事を思い出しながら携帯でカレンダーを確認する。
今日は間違いなく金曜日。
もし今日が日曜日ならば、朝一で電車に飛び乗って敦貴の住む街へと向かうのに。
敦貴とは彼が都会に帰ってから、もうすでに2回も会っている。
1回目は特捜隊の仲間達に後押しされて敦貴の元まで会いに行った。
2回目はゴールデンウィークに彼がこちらに帰ってきたのだ。
次に会えるのは夏休みと聞いているのだけど、こう言う特別な日って言うのは大切な人と過ごしたいって思うのは贅沢なのだろうか……。
一応、日付がかわった途端にかかってきた電話で相棒に『おめでとう。』って言ってもらったけど、顔を見たいって思うんだ。
今日は無理だとしても、日曜日に会いに行っていいか聞いてみようか?
誕生日なんだから、少しぐらい我儘言ってもいいよな?
今夜また電話するから、その時に言ってみよう。
誕生日プレゼントには「お前が欲しい。」って。
俺がそんな事言ったら、あいつビックリするかな?
そんな事を考えているうちに授業も終わり、放課後は特捜隊のみんながジュネスのフードコートで、ささやかな誕生日会をしてくれた。
本当は女子が料理を作ろうと思っていたらしいのだが、平日と言う事もあってフードコートになったのだとか。
気持ちは嬉しいのだが、ちょっとホッとしている。
誕生日に物体Xを食べるのはやはり勘弁してほしい。
ケーキに焼きそば、ビフテキ、たこ焼き。
ケーキ以外はいつも良く食べているものだけど、いつもより少し美味しく感じたのは気のせいだろうか?

誕生日会も終わり、皆それぞれ帰路へとついた。
クマだけはジュネスに残り、俺の替わりにバイトをしてくれている。
「今日はヨースケの誕生だから、特別クマよ。感謝しんしゃい!」と言う事らしい。
そんな訳で夕暮れの道を歩きながら、家へと向かう。
両親もクマもジュネスで仕事をしているから、当然家には誰もいない。
早く帰れる事にはなったけど、特に用事も無いし、夜敦貴に電話するまで久しぶりにゲームでもしてみようか。
鮫川まで来た時、ふと足を止めて空を見た。
真っ赤な太陽が空のみならず、川や街を赤く染めていた。

「あいつも今頃、夕陽をみているかな?」

そうならいいのになと思った。
陳腐な言葉って言われるかもしれないけどさ『空はつながってるだろ?』だからさ、同じように空を見ていたら、少しでも近くにいる様なそんな気がするだろ。

「見てるよ。」

自分の真後ろで呟かれた声。
幻聴かと思った。
だって、その声は彼の。
敦貴の声だったから。

振り返った先には、幻覚などでは無い本物の敦貴が立っていて、銀色の髪の毛が夕日に染まって、金色に輝いていた。

「……あい…ぼ…?」

「ビックリした?」

驚きすぎて、うまく声にならなくて、とりあえずコクリと一つ頷いた。

ゆっくりと抱きよせられて、優しい温もりが陽介を包んだ。
敦貴の匂いがるする。
フッと身体から力を抜いて、彼の肩に頭を預けた。
すると彼の大きな手が陽介の頭を撫でてくれた。

「誕生日おめでとう。」

「え………、まさかそれを言う為に?」

頭を上げて彼を見たら、彼は一言「うん。」と言って頷いた。

「日付が変わった時に、電話でおめでとうって言ったけどさ、やっぱり直接言いたいなって思って。気づいた時には、学校終わってすぐにこっちに来る電車に飛び乗ってた。自分でもビックリ。」

そう言って笑う彼の顔を見つめながら、改めて彼の行動力のすごさに驚かされた。

「これでおあいこだな。」

「へ?」

「この前は陽介が突然会いに来てくれただろ?」

「あっ。」

「会いに来てくれたのも、ビックリしたのもこれで全部おあいこ。ただ、明日も学校があるから、この後すぐに帰らなくちゃいけないけどね。」

「そっか。」

学校が終わってこっちに来たって、またすぐ帰らなければいけないのに、それでも会いに来てくれた事が嬉しかった。
交通費だってバカにならないのに。

「ありがとう。お前が会いに来てくれてスッゲー嬉しい。」

「どういたしまして。…俺もさ、この前陽介が突然会いに来てくれた時、すごく嬉しかったから。」

「それもおあいこ?」

「そう。それもおあいこ。」

二人からクスクスと笑い声が溢れて、やがてその唇は一つに重なった。
赤く染まる夕暮れの中、影が一つになる。
互いの温もりを少しでも感じていたくて、その後もしばらくの間、二人はギュッと互いを抱きしめ続けたのだった。



後で、ここが河川敷であった事を思い出して焦ったのは、また別のお話。
すぐ二人の世界に入ってしまうのだけは、気をつけなければ………。





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この続きが少しだけあります。




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